8/193
あいつか クセ
●あいつか
「先生ー、意地悪してくるんですけど」
「駄目じゃない」
「だって、こいつ調子乗ってんだもん」
「コラー」
「わかりました。もうしません」
「そうだ。あなたたち、ちゃんと宿題やった? 提出してから帰ってね」
「はーい」
そして、私は宿題の和歌をチェックし始めた。まずはさっきいじめられていた道くんから。
〈この世をば——〉
やだ。このコ、本当に調子に乗ってるわ。
●クセ
「後田教頭。あなたのような素晴らしい人は、校長を目指すべきです」
「でも……」
「何か心配なことがおありですか?」
「娘が恥ずかしく思うんじゃないかと」
「そんな。シャイな娘さんでも、きっと理解してくださいますよ」
「……わかりました」
そうして、彼女は校長になるための関門をくぐり抜け、その座に就いた。
「ママさー」と、彼女の娘がガムを噛みながら話しかけた。
「どうして生徒に賞状をあげるときの『表彰状ー』の言い方がカタコトな感じなの?」
「なんでか、そうなっちゃうのよ。恥ずかし!」