通常考えられないことが起きた 感動的な話
●通常考えられないことが起きた
「よお、久しぶり」
「あれ? 大毅、なんかご機嫌じゃない?」
「ちょっと、いいことがあって」
「えー、なに? 彼女でもできた?」
「いや、投資をしたら、儲かってさ」
「え? まさかそれ、女のコに勧められたんじゃ……」
「よくわかったな。鋭いよな、瑞穂は」
「うそ! そのコ、芙美って名前でしょ?」
「いや、ケーキバイキング大好き人間が好きなコ」
「だれ、それっ?」
●感動的な話
俺たちは野球のクラブチーム「横浜ワイルドドッグス」である。
メンバーには、学生からやっている野球をまだ続けたい程度の動機も少なくない。
そんななか、佐山という奴は、本気でプロを目指して活動している。
それでいて、遊び感覚に近い者にも優しく、皆から尊敬され、好かれていた。
ところが——。
「父が倒れまして、面倒を見たり、経営していた会社を継がないといけなくなりました」
そうして無念にもチームを去る彼を称え、監督がこんな提案をした。
「このチームの名前を『佐山光雄とワイルドドッグス』に改めようと思う」
誰も反対はしなかった。
ただ、みんな、「昔の音楽グループみたいだな」と感じたのだった。