私はウエイトリフティング部 どうやら疑問に思ったらしい
●私はウエイトリフティング部
「私、部を辞めます」
「え? なんでよ?」
「だって……」
「そんなこと言わないで! 一緒に頑張っていこうよ!」
私が退部を考えたのは、目の前の部長に原因がある。
競技中の私は相当ゆがんでいるのであろう、「顔(がやばい)」と言うのを見たのだ。
でも、おそらく勘違いか、口にしたのだとしても、思わずなのだろう。
そうして部を辞めるのは撤回したのだけれど……。
「顔」
やっぱ言ってんじゃねーか、おい! しかも周りへのウケ狙いの感じで。
●どうやら疑問に思ったらしい
俺の両親はともに教師で、考え方が堅い。
その息子である俺は、勉強は苦手じゃなかったが、性には合わなかった。
心を満たしてくれるのは音楽だった。気の合う連中とバンドを組んだ。担当はキーボード。
学校を卒業する前、迷ったけれど、その道を続けていく決心をした。
親には、絶対に賛成してくれないと判断し、何も言わなかった。
二人は驚いただろう。何も知らずに息子がテレビの音楽番組に出てきたのだから。
その後すぐに、電話をよこした。
「典之、あなた——」
怒るのか、認めてくれるのか、と俺は緊張して続きの言葉を待った。
「あれ、ちゃんと弾いてた?」