意外とそんなものです 特徴
●意外とそんなものです
「総理! 一言でいいので、何かおっしゃってください!」
上原壮馬は総理大臣である。
彼は、自身や他の大臣の、失態や不祥事や疑惑が続き、マスコミに追い回されている。
「二十五日はどこにいらっしゃったんですか?」
「八木大臣の件ですが——」
「唇が赤いですけど、昼食はナポリタンだったんですか?」
すると上原は足を止めて、一番後に質問した記者をキッとにらんだ。
「ミートソースです」
そう述べ、再び口を閉ざして歩いていった。
それが、彼が総理大臣として発した最後の言葉だった。
●特徴
私の父は、「真面目」で「こわもて」で「運動音痴」で「スポーツに興味がない」。
なのに、日曜の昼間によくテレビでゴルフを観ている。それも必ず女子のほうを。
私はその近くから汚らわしいという感じの視線を向けてみることにした。
それに気づいた父が、少ししてから口を開いた。
「見なさい。キャップではなくサンバイザーをかぶっている選手がいるね?」
「うん」
「頭のてっぺんが暑くないか、心配でたまらんのだ」
「……へー」
父はずっと表情を変えなかった。
私は父の特徴に、「動じない」と「言い訳はド下手」というワードを追加することにした。