私と尻 英会話教室
●私と尻
私は相撲の幕内力士。
過去には関脇や小結も経験したが、ピークを過ぎ、現在の番付は幕尻である。
しかし、これで幕尻は四回目か。よくなるな。
幕尻で、しかも、相撲取りだからいつも尻を出してるし。
昔はよく尻相撲をして遊んだよな。
そういや、中学の同級生に、川尻という奴がいたっけ。
そうそう、昔、相撲部の部長で、悪さをした部員の尻ぬぐいをしたんだ。
なんか、ずいぶんと尻に縁があるな、自分。
そんなしょーもことを考えていたせいか、七勝七敗での大事な千秋楽の取組で敗れた。
けれども引退はまだだ。妻にそう言われている。尻に敷かれているってわけだ。
●英会話教室
「ねえ、一緒に英会話教室に通わない?」
「えー」
「今どき英語くらい話せないと不便だよ」
「わかるけど……」
実は私は以前英語を習っていたが、先生が厳しくて、少しトラウマになっているのだ。
「なら、私が先に一人で行くから、良かったら来れば? ネイティブのいい先生らしいよ」
「ありがとう。じゃあ、そうしよっかな」
ところが、その友人の多英にしばらくして会ったところ——。
「アイ・ハブ・ノー・アイディア。アイ・ハブ・ノー・アイディア……」
英語は上達したが、瞳孔が開き続けた目でそうくり返すようになっていた。何があった?