特性 成人式
●特性
私の友人の憲介が、同じく友人の志摩子に恋をした。
「あのコは、筋肉ムキムキな人が好きなんだよ」
私の助言を聞き、きゃしゃな憲介は体を鍛え、ボディビルダー並みになった。しかし——。
「どうして駄目だったの?」
「だって、あの人……」
本人からは口にできなかった、志摩子が断った理由を、私は憲介に教えた。
「あんた、外国人がやりがちな、力こぶにキスをしたでしょ? あれが気持ち悪かったって」
「そうか。じゃあ、しょうがねえな」
そう言うと、憲介はまた自分の力こぶにキスをしたのだった。
どうやら男の人は体を鍛えると、女よりも自分を好きになってしまうようだ。
●成人式
「もしもし」
「なに?」
「成人式さ、待ち合わせて、一緒に行く?」
「その前に、私、式に行かないかも」
「え? なんで?」
「私、着物を着ると、演歌歌手みたいになっちゃうんだもん」
「駄目だよ、来なきゃ。もうそんなにみんなと会えなくなるかもしれないんだからね」
そして式当日。
電話で言ったことを思いだしてだろう、話し相手だった梢は私を見ると含み笑いをした。
しかも、他の友達もみんな同じように笑った。お前、言いふらしたなっ。




