断念 宣言
●断念
「アナウンサーって、早朝のニュースをやる可能性があるじゃん。私、低血圧で無理だから」
私の長女のサツキはそう言った。
でも、本当は数社受けてすぐに落とされて、なれなそうだからなのを私は知っている。
「あの高校、すごく校則が厳しいらしいんだ。そんな学校、時代遅れだから、やめた」
私の次女のヤヨイはそう言った。
だけど、本当は模擬試験で合格がほぼ無理と判定されたからなのである。
「私、絶対に諦めない」
私の三女のウヅキはそう言った。そして、とても困難だったのに、宣言通りにやり遂げた。
「次はー、品川ー、品川ー」
鉄オタの彼女はあの独特の車掌の話し方をマスターした。できれば断念してほしかった。
●宣言
結華は、自分に甘い、己の性格が許せなかった。
それで自分を鍛えるために、ある決意をした。
「みんな、聞いて」
友人を集め、彼女は宣言した。
「私は今後カラオケでは、洋楽しか歌いません」
そうしてカラオケボックスに行った際、本当に洋楽ばかり歌った。
たまにならいいけど、ずっと洋楽だとシラケちゃうんだよな、という視線を感じた。
それでも、くじけそうになりながらも、負けずに洋楽を歌い続けた。
彼女の友人の一人の章子が、他の友達に言った。
「あのコ、昔から努力の方向性が間違ってるんだよな」