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嫌いな食べ物 昭和と令和
●嫌いな食べ物
私は、人のことをよく知りたいとき、嫌いな食べ物を訊くようにしている。
嫌いなものが何かが問題ではない。
例えば納豆なら「あんな臭いもの」などと、けなすかどうかがポイントなのだ。
けなす人は、人間に対してもすぐに悪口を言う気がする。
反対にけなさない人は、いい人な感じがするのである。
だから、もちろんそれだけではないが、私はけなさなかった人を夫にした。
「へー。そうなんですね」
「エヘヘへ」
「でも、そのご主人から、あなたのグチをよく聞かされてるんですけど」
ガーン。
●昭和と令和
「さあ、ランナー三塁と二塁で、バッター四番の上村です。ここは敬遠でしょう」
そこでピッチャーの新田は、キャッチャーを呼び寄せた。
「俺、逃げたくねえ」
「……古い」
「あ?」
「敬遠で逃げたくないって、もう出尽くした昭和のテーマなんだよ」
「いや、古いとか新しいとかじゃなくて、俺の気持ち……」
「つべこべ言っても無駄。ベンチ見ろよ」
監督が審判に申告敬遠をしていた。
「なーる。こりゃ令和的で、どうしようもないわ」