親との思い出 時代遅れ
●親との思い出
「うちの両親は、本ならいくらでも買っていいと言ってくれたんですよ」
テレビのトーク番組で、俳優の黄原丈裕は言った。
よく聞くエピソードではあるものの、微笑ましい話である。
実は、この彼の親の発言は、本当に息子を思って口にしたものではなかった。
丈裕は子役から活動をしており、冒頭のように人前で語られるのを想定したのだ。
しかし、丈裕は幼い頃より芸能界にいるくらいだから賢く、その魂胆を見抜いていた。
「えー、ほんと? お父さん、お母さん、ありがとう!」
当時、彼は書店で大喜びし、本をたくさん抱えて戻ってきた。
それはすべて官能小説だった。
以来、彼の両親は本のことは一切口にしなくなったのだった。
●時代遅れ
「おい、お前!」
東都銀行に強盗が押し入った。その男が、男性の行員に言った。
「今どき銀行強盗かよ、なんて思ってるんじゃあるまいな!」
「は?」
「銀行強盗は成功しないもんなのに、時代遅れなんだよ、などと思っているんだろうが!」
「思っていません」
「嘘つけ! そっちこそな、なぜいまだに窓口は女ばかりなんだ! 時代遅れなんだよ!」
しばらくして男は警察に逮捕された。
連行されるとき、男は女性の行員たちに「言ってやったぜ」というふうに親指を立てた。
女性行員たちは「いやいやいや、別に頼んでませんけど」と首を横に振ったのだった。