駅伝で 柿
●駅伝で
「さあ、残るは乗気大学、タスキを渡す制限時間ギリギリですが、間に合うでしょうか?」
「あ、見えてきましたよ」
「おや、ランナー何か食べてますね。それも器と箸を持って。これはお弁当か?」
「おそらく、駅伝で駅弁を食うというダジャレでしょう」
「ええ? そんなしょうもないことを?」
「自分たちはどうせ優勝はないからというので、目立つためではないでしょうかね」
「しかし、苦しそうだ。走りながら食べるのですから大変でしょう」
「けれども、給水所でお茶をすすっていますよ。これも計算していたのでしょう」
「ようやく本来の、普通に駆けだしましたが、何やら元気がないですね」
「誰も笑ってくれなかったからでしょう。走り終わったら反省会だな、こりゃ」
●柿
「どうしたの? 叱るような声が聞こえたけど」
「近所の坊主が、うちの庭の柿が落ちて、服が汚れたって言ってきた」
「え? また? 前もあったよね?」
「だから、それを見ての嘘なんだよ。あのとき、お詫びに綺麗な柿をあげたろ」
「そういえば、うちの家の前をうろうろしてる子どもがいたな」
「え? じゃあ、嘘じゃなかったのか?」
「でも、柿が落ちてくるのを待ってたんじゃない? 同じようなもんでしょ」
「いや、それでも、労力を使ってるわけだし、そこまで叱ることはなかったな……」
そうして、男性は男の子を見つけて謝罪し、綺麗な柿をプレゼントした。
その後、男の子は立派な詐欺師になったのだった。