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旅立ち 行方
●旅立ち
かぐや姫がおじいさんとおばあさんに言いました。
「実は私は月からやってきたのです。帰らねばなりません」
「何言ってるんだい、かぐや姫。月には誰もいやしないよ」
「そんな現実的なことは言わないで」
「だいいち、空気がないから生きていけないよ」
「だから現実的な発言はやめてって」
「月は地球の六分の一しか重力がないんだよ」
「詳しいなあ、おい」
「そんなに決意が固いなら仕方ない。ウサギによろしくね」
「現実路線でいくなら最後まで貫いてください」
●行方
「あれー? どこに行ったんだ?」
お供をしている三匹の動物は、桃太郎とはぐれてしまいました。
「あ、便所を借りにいったのかもよ」
近くに集落があり、そこを捜してみることにしました。
「いないなー」
「どこだろう?」
「あ! もしかして、ここか?」
「ええっ?」
「まさか……」
パチンコ屋の外に一本だけ「日本一」と書かれたのぼりがあったのでした。