バンドの行く末 策略
●バンドの行く末
俺たちの曲の売り上げは下降線をたどり、ケンカも増えていった。
結果、俺たちは解散を決めた。
そして、最後のシングルを人気の音楽番組で披露することになった。
ところが、なんとサッカーのW杯の日本の試合の日と重なってしまった。
関係者に出演を別日に変えてくれと訴えたけれど、却下された。
それで、どうせ誰も観ないし、解散するんだしと、いいかげんに演奏した。
すると、目にした人たちが面白がったようで、途中から視聴率が急上昇した。
しかも、なぜか、俺たちがそれを狙ってやったという好意的な噂が広まった。
再び注目されるようになった俺たちは、解散を取りやめた。
そう、俺たちのバンドにはプライドもこだわりも一切ないのである。
●策略
「ねえ、聞いてー。すごい大発見しちゃったー」
「え? なに、なに?」
「家でご飯を食べるとき、いつも飲むお茶があるんだけど」
「うん」
「ある日、切らしちゃってたの」
「うん」
「それで、他のを用意するの面倒くさかったから、水道の水にしたの」
「うん」
「そしたら、レストランで食事してる気分になるんだよ、それだけで。超ラッキー」
その後、彼女の家に行くたび、出てくるのは水道の水になった。