懸念払拭 同情
●懸念払拭
「先生。僕、卒業したら大学へは進まず、働きたいと思います」
「え? そうかい……」
「父と同じくビジネスマンになりたいと、目標はもう決まっていますので」
教師の崎本はしかし、すんなり賛成はできなかった。
今の若者は会社をすぐ辞めたりするし、大学は行っておくべきではと心配したのだ。
「ちなみに、ビジネスとは具体的に何をやるつもりなんだね?」
「それはまだ決まっていません。ただ……」
「ただ?」
「手広くやるつもりです。父のように、とにかく手広くね」
「こいつは頼もしいや!」
●同情
「よお。お前、彼女にフラれたんだってな」
「ああ。笑いたけりゃ笑えよ」
「いや……」
「何だよ。いつもと違うじゃねえか」
「本当にかわいそうな奴をからかうのは善くないって思うもんだな」
「お前……」
「今日は早く帰って休んで、気持ちを回復させろよ」
「見直したぜ。ありがとう。じゃあな」
あいつは、俺が失恋に同情して優しい態度をとったと考えたんだろう。だが、違う。
あいつの服のひじの部分に思いっきり納豆がついていたからだ。




