168/193
百人一首 良き友
●百人一首
「冬休みの宿題の、百人一首を覚えてくるの、ちゃんとやったか?」
「先生」
「何だ?」
「百人一首って、すごく似てるの、ありません?」
「ほお。どれとどれが似ている?」
「え? えっと……」
「覚えてきたなら言えるはずだぞ」
「すみません。うろ覚えです」
その後、職員室に戻った教師はつぶやいた。
「ほんとだ。これとこれ似てる。あ、これとこれも」
●良き友
世の中は皮肉だ。
私の友達の裕子は目立ちたがり屋だが、そのせいもあるかもだけれど、人望は薄い。
一方の私は、目立つのは好きではないのに、謙虚ということでか、人に好かれやすい。
ただ、裕子は悪いコではないのだ。第一印象が悪かったりするだけで。
そこで、歯科医である私は、考えた。
「ねえ、これ、なに?」
「カメラだよ」
「え? なんでカメラ?」
「裕子が喜ぶと思って」
裕子の口の中と治療の様子を今、パブリックビューイングで大勢の人が見ているのだ。