後悔 俺の周囲
●後悔
我々アール星人は、地球を征服するために自分たちの星からやってきた。
当初の予定では、数カ月で支配できるはずだった。が、思いのほか地球人は手強い。
とはいえ、我らがリーダーのギール隊長がきっと有効な打開策を提示してくれるだろう。
「隊長、この先の戦い方はいかがいたしましょう?」
「これまで通りで良かろう」
「しかし、ここに降り立って、その戦術で、かれこれ五年になりますよ」
「そうか、そんなに経つか。歳はとりたくないものだな」
「この調子だと、十年、二十年と続いてしまうおそれがあります」
「まったく、月日が経過するのはあっという間だ。歳はとりたくないものだな」
この部隊に参加するんじゃなかったな……。
●俺の周囲
大学生の俺が、友人の井崎の部屋に遊びにいったときのこと。
「なあ、このDVD借りていいか?」
そこには手書きで「スピーチ」と書かれてあった。
「親父が結婚式のスピーチを頼まれて、困ってるらしくてさ」
「ああ、いいよ」
俺は実家に用があったので、ついでにそれを親父に貸した。
「耕平、変なものをお父さんに渡さないでよ」
「変なもの?」
DVDはプロレスラーの面白マイクパフォーマンス集で、父は素直に参考にしたという。
前からうすうす感づいていたけれど、俺の周りは変人ばかりのようである。




