現実的な対応 罰
●現実的な対応
眼科医である徳永が患者に言った。
「待合室で、ずっと携帯を見てらっしゃいましたね。目に良くないので控えてください」
「でも先生、ここのクリニック、携帯で探して見つけたんですけど」
さらに同じような注意をした際も。
「だけど、先生だって今、パソコンを見てるじゃないですか」
また別の機会には。
「そうおっしゃいますが、先生もメガネをかけて、目がお悪いんでしょう?」
彼は考えて、クリニックの壁にこういった張り紙をした。
〈皆さまの、目に悪い行いのおかげで、当クリニックは儲かります。ありがとうございます〉
それを見た患者たちは目に良くない行為をセーブするようになったのだった。
●罰
クリニックの内科医である鯨岡のもとに、かかりつけの患者のマチ子がやってきた。
「先生、私、どうも近頃、物忘れがひどくて。認知症になったんじゃないか心配なんです」
「ハハハ、大丈夫ですよ。だって、その心配を僕に言うのを忘れてないじゃないですか」
「あ、そうですねー。よかった、安心しました」
鯨岡は儲け主義で、認知症の専門医に患者を奪われまいと、今のように答えたのだった。
「先生、お年寄りの相手は大変ですね。何回も同じやりとりをされて」と看護師が言った。
「え? 何回も?」
「はい」
鯨岡は別の病院に患者としてやってきた。
「先生、私、どうも近頃、物忘れがひどくて。認知症になったんじゃないか心配なんです」




