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情熱と冷静 ブランド好き
●情熱と冷静
私の学校の多治見先生は、熱狂的なサッカーファンだ。
「先生。今日、大事な試合なんですよね?」
「おお、そうだ。うおー! 頑張れよー、選手たちー!」
代表の試合前になると、子どものように興奮する。
「あーあ、負けちゃった」
「途中までは良かったのにねー」
そして翌日——。
「先生。昨日、残念でしたね」
「人生はそううまくはいかないものだ。いい勉強になったね」
ところが試合後は一転して、やたら大人らしい態度になるのである。
●ブランド好き
「隣に引っ越してきた人、これをくれたわよ」
「何だ、タオルか」
「でも、今治のよ」
「なにぃ! ほんとだ!」
その後——。
「隣の人、こっちがあげたお返しに、冴えない表情をしてたわよ」
「どこのかをまだ見てなかったからだろ」
「だといいんだけど」
「そうだよ。俺だって鯖江のじゃなきゃ、なんでメガネなんだって思うもん」
「そうよね」