ペンネーム 災い転じて
●ペンネーム
夏目漱石と芥川龍之介は師弟の関係だった。
「芥川くん、きみにペンネームはどうかと思って考えたんだけれども」
「本当ですか? 先生もペンネームですものね。光栄です」
「うむ。そのきみのペンネームは『クリエイティビティ田中』だ」
「クリ……はあ……?」
「知っての通り、私は英語が達者だ。それに時代的に世界を意識したものが良いと思ってね」
別の弟子が、このやりとりの前に漱石のこんな独り言を耳にしていた。
「なに、あの『芥川龍之介』って名前、超かっこいいんですけど。マジで本名かよ」
漱石は芥川に嫉妬していたのだった。ゆえにちょっと変な名を提案した。
そして芥川は当然のごとくそのペンネームをつけることはなかったのだった。
●災い転じて
「もー、お父さんとお母さんのせいだからね!」
「どうしたの?」
「また男の人に『きみの親御さんは元暴走族なの?』って言われたの!」
「そうか、すまない。いろいろ考えて命名したんだけど……」
「それに、付き合えても、相手の家族から警戒されたような眼で見られちゃうし」
「ほんと、ごめん」
「いいよ、もう、私専業主婦になりたかったけど、諦めるから」
そして彼女は社会に出て、出世の道を突き進んでいった。
やがて邪馬台国の女王となった。
名を卑弥呼といった。




