カウントダウン レシピ
●カウントダウン
その日、注目されているロケットの発射が行われる。
「おい、カウントダウン、かっこつけて言うなよ」
「わかってるよ」
「いや、世界が見るんだから、かっこよくやったほうがいいぞ。ゼロはジロウって言え」
「え? ジロウ?」
「そう。スリー、ツー、ワン、ジロウだ。ほれ、言ってみ」
「スリー、ツー、ワン、ジロウ」
そして、予定時刻になり、ロケットは発射に成功した。
それを目にした人々の多くが、こう話した。
「カウントダウンをした人、なんかゼロを言う瞬間、笑ってなかった?」
●レシピ
料理人である僕のもとに、修業時代を一緒に過ごした椎名から電話があった。
「なあ、頼むよ」
現在、僕の店は順調だが、椎名のところは苦戦しているらしい。
「お前のレシピ本に載ってる料理、俺も協力したんだから、俺のにも載せていいだろ?」
「えー、駄目だよ」
「いいじゃねえかよ」
「駄目だったら。自分が考案したのを掲載しなよ」
そう言ったのに、椎名は僕のレシピを載せた。それで文句を言ったところ——。
「お前んじゃねえよ。ちゃんと確認しろって」
よく見ると、大さじ三が二だったり、小さじ一が二だったり、微妙に変えてやがった。




