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子煩悩 ボクシングの指導
●子煩悩
「僕、将来パイロットになる」
「うん、そうだな」
「ちょっと、あなた」
「ん? 何だ?」
「小学生ならまだしも、陵太はもう大学生なのよ。パイロットなんて絶対に無理じゃない」
「ああ……なあ、陵太、パイロットは厳しいんじゃないか?」
「今はさ、飛行機はほとんど自動で動いてるんだよ。パイロットなんて誰でもやれるよ」
その後——。
「はい。大空航空会社ですが、どういったご用件でしょうか?」
「パイロットになるハードルが高過ぎるので、緩和してください」
●ボクシングの指導
「いいか、力むのが一番良くねえ。パンチの威力もスピードも衰えちまう」
「はい」
「そこでだ。この牛乳パックを開くのに、力を入れると変なところが破けてしまう」
「はい」
「軽くやれば綺麗にできる。リラックスする感覚を身につけるために、たくさんやれ」
しばらくして——。
「コーチ」
「何だ?」
「もしや、これはゴミのリサイクルの面倒な作業を俺にやらせたいだけでは?」
「バレたか」




