悔しい ライバル
●悔しい
私は漫才師。年末に行われる大きな大会において、準決勝で敗退した。
「あーあ」
この日のために、一年間頑張ってきたのに。立ち直れない。
「倫世」
そう声をかけてきたのは、別の漫才コンビを組んでいる妃花だ。
「ねえ、私たちが目指すものって、大会の優勝じゃなくて、お客さんの笑顔なんじゃない?」
「妃花……」
「だから落ち込むことなんてないんだよ」
妃花のコンビは、一回戦で姿を消した。
あんたは少し悔しがったほうがいい。
●ライバル
漫才の大会での敗退が尾を引いているのか、私たちのコンビはスランプに陥った。
ウケないし、そんなつもりはないのに、やる気が感じられないと批判も浴びた。
しかし、とにかく頑張るしかない。相方の結愛とそう確認して稽古を重ねた。
すると、徐々にまた笑いをとれるようになっていった。
そして、コンビ結成七年目の記念の日に、今までで最高のネタ披露ができた。
「努力は裏切らないってよく言うけど、ほんとなんだね」
「妃花」
「見てたよ、あんたらが奮闘していた姿。ライバルに負けないように、私たちも頑張るから」
そうして彼女はかっこよく去っていった。いい奴だと改めて思った。
ただ、妃花たちのはくっだらないギャグや下ネタばかりだ。ライバル視はしてほしくない。




