スリ これは悪さをしてきた罰なのか?
●スリ
俺はスリ。これまで何度も人の財布をスってきた。
しかし、こんな調子で一生生きていけるわけはない。そう思い、足を洗おうともしてきた。
だが、尻のポケットから半分以上も財布を出している無防備な奴が少なくない。
それを見ると、ついまたスってしまうのである。
「しょうがねえ。今後スられないように気をつけるだろう。その役に立ったと思えば」
そんなことを口にして、スった財布の中を覗いた。
「チッ、空か。たまにあるけどな」
カネはなかったが、メモのようなものが入っていて、こう書かれてあった。
〈引っかかったな〉
……俺に向けての言葉か?
●これは悪さをしてきた罰なのか?
スリである俺は、引っ越しを考えていた。
それで、不動産屋を通るたび、店前に貼ってある物件を眺めた。
「何だ、これ。この広さで、家賃これだけかよ」
俺はその不動産屋のドアを開けた。
「すみませーん」
だが、なぜかその中はラーメン屋だった。
「あれ?」
すると、俺よりだいぶ年上だろう、店主らしき男が言った。
「引っかかったな」
「えー?」




