彼女は装丁家 彼は脚本家
●彼女は装丁家
「は~あ」
佳奈美は装丁家。本の表紙をデザインする仕事をしている。
しかし日本では本に書店でカバーをされることが多く、残念に思っているのである。
「そうだ」
彼女は思い立ち、多くの書店に次のようなメールを送った。
〈御社のブックカバーを無料でデザインいたします〉
その後——。
「あの、タダでブックカバーをデザインしてくれるって誘い、やめるわ」
「どうして?」
「見て。その人が最近デザインした本の表紙そのまんま、タイトルまで入ってるの」
●彼は脚本家
尚二は脚本家。テレビドラマのシナリオを主に書いている。
「このシーンなんだけれども」
テレビ局のプロデューサーが指摘したのは次のような文章だった。
「お前、なんでこんなに大変な状態になるまで、俺に相談しなかったんだ!」
「だって俺、子どものとき欲しい玩具をもらうので、お前に一生のお願いをしちまったから」
「バカヤロー。じゃあ、俺がお前にやっていない、一生のお願いを今するぜ」
「え?」
「俺の助けを受けろ!」
尚二は「ここが何か?」と問うた。
「はっきり言おう。ダサい」




