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宝の持ちぐされ 持つべきものは友だけど
●宝の持ちぐされ
俺には時を止める能力が備わっている。
しかし、「それを使って、こうしてやろう」という野望はない。
また、良い活用法を思いつくこともない。
なのに、なぜ俺なんだ——と、時折考える。
そんな俺は今、道を歩いている。
!
俺は時間を止めた。
そして目に入った、工事現場にある、赤い円すい形のコーンを頭にかぶった。
「一度やってみたかったんだよな」
そうか。こんな調子だから、神は問題ないと判断して、この力を与えてくれたのだろう。
●持つべきものは友だけど
「お前、すげえかわいそうだよ」
「ほんと。俺だったら絶対に耐えられねえ」
「負けるなよ。気をしっかり持て」
「俺たちはお前の味方だからな」
「……」
「ん? どうかしたか?」
「いや……」
うちの家には、ベランダに屋根がない。
だから、洗濯物を干していて雨が降ると確実に濡れる。
しかし、ここまで同情されると……なんかムカつく。




