君は引き摺り続けてくれるだろうか?
注意事項1
起承転結はありません。
短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。
注意事項2
動画ノコメント欄って、凄まじいんですよ。
名言がゴロゴロ転がってる。
はっとさせられる。
自分の弱さに気付かされる。
貴方の事が大好きで、大好きで仕方がない。そう言うときに『貴方以外何も要らないの』と言う言葉がすんなり出てきたならば、それは本当の愛だと言う。
好きな物は幾つかある。狂おしい程好きだと自負している。けれどもそれが無くなっても、多分立ち直れるし、代わりを見つけようとするだろう。
……失恋を癒すには新しい恋を。という数多くの有名人が発していた名言を思い出す。そう替えが効くんだ。『運命の人』なんて、『貴方が一番好き』なんて。
ある時の喫茶店の出来事、目の前に彼氏が座って、静かに珈琲を啜っていた。優しいと、思う。好きだとも、思う。けれども『貴方以外要らないの』なんて言葉は決して出てこない。
「あのね、最近知ったんだ。本当に好きならば『運命の人』、『貴方が一番好き』なんて言葉、使わないんだって。私……私は……」
つい最近、なんの気なしに言ったのだ。『貴方が好き。一番好き』と。無責任に言い放ってしまったのだ。故に、怖くて仕方がない。あんなにも薄っぺらい言葉を吐いた自分が許せない。
「君は此処の純喫茶が一番好きだと言っていたよね?」
彼は震える私を余所に、静かに問い掛けた。
「言った……」
「此処が無くなっても、他を当たれる?」
「……うん……」
当たれる。此処が一番好きだけれど、此処が無くなったら、金輪際、珈琲が飲めないなんて事はない。他の店が行きつけなるだけだ。
「うん。じゃあ、此処があった痕跡、例えば口コミとか、人々の記憶、勿論君も含めてだけど、それらがまるまる消えてしまう。つまり、初めから無かった事にされても、君は耐えられる?」
店が潰れてしまうのは仕方がない。様々な理由があるだろうが、受け入れられる。けれども元々あった口コミ、此処を愛した人が何食わぬ顔で新しい店を訪れるのは、そんなところは無いよ、と宣言されてしまうのは。
「ヤダ……。考えたくない。例え潰れたとしても、私にとっては此処が一番で、それ以外考えられなくて……。代えは効くかも知れないけど、空いた玉座は譲れない」
多分、未練がましく引きずって、他の店を訪れる度に死んだ目をするのだろう。此処じゃない。此処でいい訳ない。と叫びながら。けれどもきっとそれに安心し続ける。最愛はそこだったのだと、心の何処かで安心する。それは此処が最愛で、他では埋められないから。
「例え潰れても、ずっと未練を引き摺り続けられたら、それは『貴方以外何も要らない』と言われているのと同義だよ」
それから静かに切れ長な目を見開いて、蠱惑的に笑う。
「君は引き摺り続けてくれるだろうか?」
これを考えたのは、動画のコメ欄から。
『一番好きとか、運命の人とかって言葉、マジで薄っぺらい』
改めて考えて思ったんです。
上の言葉、替えがきくんですよ。
一番好きが失われても、二番目に靡けば良い。
運命の人じゃなくとも、恋愛は可能。
絶対に『貴方以外、何も要らないの』なんて言葉、出てこないんですよ。
そう思って神社仏閣、純喫茶を考えてみました。
無くなっても、恐らく別の場所に行く。
一応は立ち直れる。
けれども生まれてきた痕跡さえも無くなったら?
思い返す事も出来なくなったら?
私は耐えられません。
それこそ最後の台詞。
比べてるだけ比べて、結局あそこが一番なんだ。
と嘆きながらも安心します。
※やってる事、クソですが。
だから『貴方が一番好き』なんて薄っぺらい言葉は吐きますが、『無くなったら死ぬまで引き摺り続けるから、許してくれ』状態です。