何と言おう
ミシェルさんに頼まれてから二日が経った朝。結局二日経ってもカニエルの行動に納得がいかなかった。何も言わずに朝食を済ます。その納得がいっていないという気持ちが伝わってしまったのか、アルもロンも何も言ってこなかった。出発しないと密会に間に合わない時間になったので私とアルはカニエルに気づかれないように変装をして城を出た。目的は謎の女性と会った直後のカニエルから話を聞くこと。行き先はミシェルから聞いたカニエルが件の女性と会っていたお店。
馬車でお店の近くのまで向かっているとアルがずっと私の方を見つめてくる。気になる。しばらく放っておいていたが、思い切って聞いてみることにした。
「どうしたの? そんなにじろじろと見て」
「いや、エリは強いなと思ってね」
「強い? 私が?」
「だって婚約破棄をしてきた相手にこれから自分で会おうとしてるのだから。それを強いと言わずして何と言う」
「……それはそうかもしれないけど」
「エリのそういうところが僕は好きだけどな」
唐突なアルの好きという言葉に思わず頬が赤くなってしまいそうになる。
「何を言っているのよ」
「はは、ごめんね」
アルはこんなことを平然と言ってしまうところがある。だから逆に私はアルが本当のところ私のことをどう思っているのかわからなくなる瞬間がある。なぜならこの契約結婚は私がカニエルとの一件がきっかけでアルの城に運び込まれたことが始まりだから。私はアルに本当は何と言ってもらいたいのだろう。
そんなことを考えていると目的地の近くに到着した。馬車を降りて件のお店へと向かう。なんだか緊張する。何だかんだでカニエルと会うのはアルと再会したばかりの頃に起きた汽車の密輸事件以来だからである。
「着いたね」
アルの言葉ではっとする。考えている間にお店の目の前まで到着してしまった。
「中に入ろうか」
アルにそう言われて私は頷く。店内に入ると中は盛況だった。壁に掛けられている時計を見るとカニエルのメモに書いてあった時間までまだ数分はあった。間に合ったようで助かった。空いていたテーブルの席にアルと向き合う形で座る。お店の人がカウンターの方から駆けてきた。
「何を注文しますか?」
アルが先に応じる。
「おすすめの紅茶を一杯。それと……」
「私も同じのをいただけますか?」
「お任せの紅茶を二杯ですね。かしこまりました」
お店の人はカウンターの方へと戻っていった。
「さてと待ちますか」
「そうね」
緊張する。一体カニエルは何を考えているのだろう。私はカニエルに何と言おう。頼んだ紅茶を待っている間にお店の入り口が開く音がした。入り口の方を見るとそこにはカニエルと今まで見たこともない女性の二人が入ってくるところだった。




