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再会する二人

 目が覚めた私はふかふかのベットで寝ていた。壁に掛けられた時計を見ると時間は既に夜だった。

「ここは、どこ……」

 ベットの横には私が持っていたお金と写真が置かれていた。それを手に取り、起き上がって部屋を出る。

「あの、誰かいませんか?」

 部屋を出ると目の前には大きな窓があった。月がよく見えている。私は朝に馬車を避けてそれから転んで怪我をしたことを思い出す。気を失ってから何時間も寝ていたことに気づいた。

「結構な時間眠っていたのね……」


「ああ、目覚めたようですね」

 後ろを振り向くと執事服の男が立っていた。後ろに突然現れたものだから少し驚いてしまう。

「ええ、まあ」

「それなら良かったです。これから食堂へご案内いたします。ご主人様がお待ちです」

「ご、ご主人様?」

「ええ、ぜひあなたにお会いしたいと」


 私はこの執事に案内されるがまま、食堂へと通された。食堂には長テーブルが一つだけあった。窓からは街の景色がよく見える。長テーブルの奥には一人の男が肉をナイフで綺麗に切っていた。

「ご主人様。お連れしました」

「ありがとう。できれば私と彼女で二人きりで話したい。あなたはそれで良いだろうか?」

「私ですか?」

「そう、あなたに聞いている」

「まあ、構いませんが」

「よかった。クロース」

「かしこまりました」

 執事、クロースはお辞儀をするとすぐに食堂を後にした。私とこの屋敷の主人で二人きりになる。


「どうか、座って食べてほしいな。朝のお詫びだ」

「ありがとうございます」

 席に座って用意されていた肉を食べる。向かい合って座る私たちの間には少し距離があった。

「先程は申し訳なかった。危うく馬があなたを轢いてしまうところだった」

「いえいえ、こちらの方こそ注意を怠っていましたので、申し訳ないです」

「では、おあいこですね、エリ」

 屋敷の主人からエリと呼ばれた瞬間、急に懐かしい日々のことを思い出した。幼馴染で今は王子となったアルと遊んだ日々のことを。

「どうして、あなたがその呼び方を知っているのですか? その呼び方はアルバート王子しか知らないはずです」

 すると、彼はくすくすと笑い出した。その笑いには少し悲しい気持ちが含まれているような気がした。

「どうしてって、忘れたのですか? 僕ですよエリ。アルです」

 彼は一枚の写真を手に持っていた。それは私とアルしか持っていないはずの写真だった。頭の中で彼が誰なのかがようやくわかった。

「アルバート王子! いやアル、アルなのね!」

 思わず声が大きくなる。そうだ、この屋敷の主人はアルバート王子。かつて一緒に遊んだ幼馴染のアルだったのだ!

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