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放たれたら炎

 私たちは急いで窓から様子を見た。一見すると誰もいない。だが、城の中に何かが投げ込まれたのは確かだった。よく見ると割れた窓が一つあって、そこから赤い火が見えている。

「あれって……」

「まずい!」

 私たちはその部屋へと向かった。すると火が床の絨毯に燃え移りゆっくりと広がり始めていた。

「誰か! 水を! 大量に水を!」

 このままでは城全体が燃えてしまう。そうなる前に私たち、使用人たち総動員で火消しに当たった。


 火消しを始めてから十分ほどで火は鎮まった。幸い他の場所へは燃え広がらずに済んだが部屋中に焦げた臭いが立ち込めていた。

「いやまさか、ここにも火を投げ入れるとは……」

 アルはガラス片を踏まないように注意して火元であろう物を手に取った。やはり鋭利な矢のような物である。

「同じ誰かがこれを放ったとしか考えられない」

「そうね。ここまでになると一体どうしてなのかが気になるわね……」

 私は腕組みをしながら考えてみた。うーむ。そうしているとロンが申し訳なさそうな顔をしていた。

「ごめんなさい。僕のせいでエリーナ妃やアルバート王子にまで危険が及んでしまって」

 彼は頭を下げた。彼はとても責任を感じているようだった。

「いいのよ。こんなことであなたを責めたら人として失格だもの。だから、責めないし追い出したりはしないわ」

 私が彼に今伝えられることはこれくらいのように感じられた。私の言葉を聞いて彼がどう思ったのかはわからない。それでも、彼はその場で泣いた。

「僕、怖いんです。何もした覚えがないのに、家や居場所を二回も襲われて、僕はなぜこんな目に遭わなくちゃならないんだ……」

 彼でなくても、理由もわからずに二回も火を放たれたら、それは怖い。私だって彼の立場だったら泣いていたかもしれない。ロンの涙を見て私はこんなことをする人を必ず見つけ出して、理由を聞こうと決意した。


「ロン、大丈夫。私たちが必ずこんなことした誰かを見つけるから。だから、少しは安心してほしい」

 私は真っ直ぐにロンの目を見つめて話した。彼はそれからもっと泣き出してしまった。

「ああ、ごめんね……」

「違うんです、嬉しんです。見ず知らずの僕にここまでしてくれるのが」

 するとアルが少し笑った。

「なんで今笑うのよ、アル」

「ああ、ごめん。あなたはなんていい人なんだと思ってね」

「それは、アルもでしょ」

「そうだね。じゃあ、改めてこんなことをする輩を探し出すとしますか」

 アルが私の目を見つめてきた。私も彼の目を見る。

「ええ、もちろん」

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