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科学っ子との出会い

 アルと契約結婚をしてから二ヶ月が経った。彼との生活にもだいぶ慣れてきたので、たまには気ままに外に出るかとこっそり城を抜け出した私は市場に来ている。

 昔から市場にはあまり馴染みがないのだが、市場特有の活気を見ているのが好きだった。だが、いざその活気の中へ入ると人酔いして少し大変だ。そうだ、この市場の中で酔い止めは売っているだろうか?

 私は酔い止めを売っていそうなお店を探したがなかなか見つからない。酔いが酷くなってしまったので、道端に座り込んでいると、背後から肩を叩かれた。私はすぐに後ろを振り返る。

「あの、辛そうですが大丈夫ですか?」

 目の前には十代半ばくらいの男の子が立っていた。

「ちょっと人酔いしちゃってさ。ねえ少年、この辺で酔い止めを売ってるお店知らない?」

 すると少年は辺りを見回した。探してくれてるのだろうか。

「ごめんなさい。この辺には無いと思います。ただ、放ってはおけないので家で薬を調合してみます」

「え?」

「動けるならついてきてください」


 私は言われるがままに彼の後をついて行った。酔いが苦しい中で彼は私を助けながら、彼の家へと着いた。

「そういえば、自己紹介がまだでした。僕はロンです。よろしくお願いします」

「私は、エリよ。よろしく」

 彼の家の中に入るとそこには科学実験のための道具や本が沢山置かれていた。

「すごい、あなた科学者なの?」

「まあ、科学っ子と言ったところでしょうか。好きですけどまだまだです」

 彼は部屋の奥から何やら色々な薬品みたいな物を集めた。それから集めたそれらを混ぜ合わせて調合した。

「とりあえず、酔い止め代わりの薬です。飲んでください」

 そう言われて薬を飲むと、なんだか体が楽になってきた気がした。

「ありがとう。おかげで少しは楽になったよ」

「それなら良かったです」

 私はロンの部屋を見回してみた。部屋全体の手入れはしているようだが、ところどころホコリっぽかった。机には一枚だけ写真が置かれている。ロンともう一人、十代半ばくらいの子供が写っていた。


「そういえば、あなたはエリーナ妃ですよね?」

 しまった、気づかれていたのか。私は思わず手を挙げる。

「そうです。その通りです」

「どうして市場に居たんですか?」

「たまにはああいう場所にも行ってみたかったんだもん。でもこれで懲りたわ……」

 私は少し苦笑いをした。すると彼もまた同じような苦笑いをした。

「でも、これで将来有望な子と会えたわ。何かあったら城までおいでね」

「え、良いんですか?」

「良いよ、良いよ!」

 こんなことを軽々しく言った私は、体調も回復したので城に帰ることにした。

「じゃあね。お薬ありがとう」

「いえいえ。では、お元気で」

 別れ際、彼は何かを私に言いたげな顔をしていた。だが、それが何を意味するのか私にはわからなかった。

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