第1章 おまけ
私がアルの城に引っ越した翌朝。私は出来心でアルの部屋がどんな部屋なのかを見に行った。
「ここがアルの部屋ね」
アルの部屋はとても手入れが行き届いた空間だった。整然と並べられた数々の本や道具。机の上には地球儀なんかが置かれている。綺麗に整頓されている部屋だったのだが、気づいたことがあった。本棚から一冊だけ本が抜かれていて無いのだ。彼が読むために抜き取ったのだろうか。うーん、彼がどんな本を読んでいるのか気になる。
ということで、私はそこにあった本がどんな本なのかを考えることにした。無い本の周りには、難しそうな科学が書かれている本や哲学なんかの本がある。だからここにはそれ近しい難しい本が普段はあるのではないだろうか?
「うーん、何の本だろう……」
「どうしたの?」
「うわ!」
私は驚いた。振り向くと部屋の前にアルが立っていた。ちょうど一冊の手帳の様な物を持って。
「ああ、ごめんなさい。アルの部屋がどんな部屋なのか気になったの」
「そうなんだね。まあ今日からここはあなたの家でもあるから好きに入ってくれても構わない」
彼はそう言うと、机の上に手帳の様な物を置いた。それはとても分厚かった。ちょうど、本棚の空白にすっぽり入るくらいの厚さだった。
「ねえ、それは何なの?」
私はアルに気になることを聞いてみた。
「ああ、これは写真入れだよ。昔の思い出が沢山詰まっているんだ」
アルはそれを見せてくれた。中には彼が幼い頃からの写真が何枚も入っていた。アルがパラパラとページをめくっていると、ある部分で彼の手が止まった。
「どうしたの?」
「いや、懐かしいなと思ってね」
そのページには、幼い頃の私とアルが二人で手を繋いで走ってる写真があった。これを見た彼が私の手を握る。
「これでまた一緒に走れるね」
唐突に言われたこの言葉になぜだか、私は胸がときめいて赤面したのだった。