ゆりこさん
ゆりこさん
源さんに相談ーーー
「おう、今日は何の用だ?」
「えっ そんな―、用事がなくても来ちゃだめですか?」
「うちは商売をやってるんだ、商売の邪魔だ、帰れ」
「そんな事言わないでくださいよ、装備の相談なんですから」
「装備? もう十分揃ってるだろう」
「いや~ 今の装備じゃ 川越の上層までが限界じゃないですか」
「はあ~? 何言ってるんだ? 川越の上層って言ったら、行けるのは5大パーティーくらいだろうが・・・・・・ん?」
「えっ? 」
「ぼうず、川越に入ったのか?」
「あっ いやっ・・・・・・」
「かっくん!」
あっ やっちゃった
「・・・・・・・」
「行ったんだな!?」
「もう、かっくんったら、しょうがないな~、源さんだからいいわよ、私が話す」
「おお、じょうちゃんが教えてくれるのか」
「はい、全部は言えませんけど少しだけなら」
「おお そうか で?」
「川越の5階層はクリアしました」
「と言う事はそれ以上もか?」
「詳しくは言えませんけど そうです」
「はあ~ やっぱりな~ お前ら一体何者だよ、
いいか、勇者は5階層を今だに制覇できていないんだ、
女王たちで3階層 国防の情報はまったく入ってこないけど、
俺達の予想では7階層くらいだろう。
やっぱりあの動きは勇者よりはるかに上だったんだな~」
「お前ら、どれくらい深く潜ってんのか!?」
「それはちょっとー」
「そうか、・・・そりゃあ 今の装備じゃあ心もたないわな」
「そうなんです」
「じょうちゃん、あのな~、俺達は川越用の装備は全然わからない、知らないんだよ、俺じゃあ無理だな」
「でも、私達より、素材の事詳しいじゃないですか」
「まあ 武器屋だからな」
「それを教えてほしいんです」
「私達は、どんな武具が良いかはわかってるんです。ただ、それを作ってもらうのに、どんな素材が必要かわからないんです。そして作ってもらいたいんです」
「そうか、そういう事か」
「はい、管理局や協会に頼むと、きっと川越に行けって命令されると思うんです、でもそうじゃなくて私達だけで自由に川越に入りたいんです」
「まあ、それでいいなら やってやるよ」
「ありがとうございます」
相談できると思っていたら ゆりこさんが
「あれ?ゆりこさん?」
「こら!」
「あっ? ゴメン」
そうだった袋かぶってないんだ
また やっちゃった
「誰?」 ゆりこさんが??
俺が俯いていると、
また源さんと2人で奥の部屋に
何の相談かな~
SIDEゆりこさん
私達の最高記録は川越の3階層
変態マンに助けられてから、5大プレイヤーともてはやされてるけど、まだまだ弱いって痛感した。
あれから必死に訓練して、しっかり体力を付け私達も強くなった、今ならもっと下に行ける。
豊洲の34階層のリベンジはできたけど、5大プレイヤーと言われる私達は、川越で真価を発揮する。
担当官から、もっと下の階層を目指しませんか?と言われるとどうしても断れない
そう、昔から頼まれると断れないこの性格で苦労してきたから、こんな恰好で、まわりを威圧しているけど、根は変わってない。
ほんとうはもう少し訓練してから と思っているけど・・・・・・皆も同じ、結局受けることに。
こんな事 変態マンや源さんにしか相談できない。
変態マンに会えるのはまだ半月も先、
やっぱり源さんの処に行こう、そう思って、上野の源さんのお店に
「源さん」
「おお、どうした? 落込んでるのか?」
「ううん そうじゃないけど」
「まあ はいれや」
「はい」
「ぼうず、ちょっとまっててくれ」
そう言って奥の部屋に入れてくれた
あれ?この子たち 源さんのお客様?
なんとなくだけど 初めて会ったような気がしない
気になるけど、今は川越の事でいっぱい
源さんにその事を話すと
「そうか、お前らも大変だな、まあ俺が言うのもなんだけど 無理はするな、ちょっとでも気になる事があったら引き返すんだ、いいか、国交省の担当官に何を言われても気にするな、いいな引き返すんだぞ」
「うん わかった」
そう、何を言われても 危なそうなら引き返そう 。
そう決心して 川越に望んだ
3階層までは順調だった、4階層も訓練の成果でなんとか制覇して5階層の入り口
雰囲気が全然違う、確かに情報ではスケルトンにアンデッド、ボスがゴーストなんだろうけど、なんかいやな感じがする。
スケルトンと戦ってみて、まずそうなら引き返そう
そう言うと、皆も頷いてくれたので
スケルトンと戦う事に。
スケルトンは思ったより簡単に倒せた。
「先に行ってみる?」
皆は黙っているから
「ちょっと様子を見るだけ」
そう言うと 頷いてくれたから ゆっくり進むと
アンデッドがこっちに向かってゆっくり歩いてくる
「ゆりこ、 なんかいやな予感がする」
「うん」
私がどうしようか悩んでいるうちにアンデッドが
どんどん近づいてきたので、ようこが思わずエネルギーボルトを撃ったけど、アンデッドは倒れてもまた起き上がるので、ミキが立て続けに6本矢を射る、そこにようこが火炎魔法を放つとアンデッドが焼けこげになって最後は消えたけど、異様な雰囲気が
「ゆりこ、帰ろうよ」
「うん、でも」
「無理だよ~」
「うん でも担当官が・・・・・・」
「「ゆりこ・・・」」
「そうね、帰ろうか、帰って皆であやまろうか」
「うん」
引き返そうとしたところ 岩壁からゴーストが
ボスだ 思わず鞭を 当たった瞬間 ゴーストが光ってビクっとはねたので 立て続けに鞭を打つとサーッと壁に消えてしまった。
引き返そう そう言って 5階層の入り口に向かって歩いていたら ミキがうなりながら倒れてしまった。
何があったかわからないままま さよこにヒールを掛けてもらいまわりの様子を見る。
ゴーストだ、壁からすーっと出てきて呪詛を掛けると言っていた。
どこから出てくるかわからない、どうしよう 皆も注意深く壁を見ているけど、出てくる気配がわからない
3人でミキとさちこを囲むように周りを警戒していると、今度はようこが、そしてまちこまで 3人も
失敗した・・・
「さちこ 大丈夫?」
「なんとかがんばってみる」
どこから出てくるかわからない、なんとか3人が立てるようになったら走って逃げよう、それまでは私が、そう思って鞭を振り回して近づけないように、ゴーストが現れるけど、鞭に当たる前に壁に消える それの繰り返し
私もずーっと鞭を振り続ける体力が・・・・・・
あ~ 皆が帰ろうと言った時そのまま引きかえせばよかった。
なんでいつもこうなんだろう、
源さんの言う通り、担当官なんて・・・・・半月すれば変態マンに会えるのに ここで終わっちゃうの?
あ~ だんだん力が尽きてくる・・・・・
―女王が川越の入り口に着いた時から1時間ほど前――
豊洲の朝は早い
「今日はゆりこさん達は川越ですかね」
「ああ」
「大丈夫かな~」
「まさか 女王様のあの恰好がそういう処から来ていたな
んて思わなかったですよね」
「そうだな」
「大丈夫ですかね」
「無理しなきゃいいけど」
なんとなくイヤな予感が、
そんな事を3人で言っていると
さゆりさんが俺達に向かって
「私達のこの世界は一般人とは違う、一宿一飯の恩義を忘れちゃいけない世界だ 行くぞ」
「「はい」」
豊洲まで来たけど、そのまま3人でタクシーに乗って川越ダンジョンへ
ゲームの世界では画面切り替えで済むけれど、
ここは現実世界、豊洲から川越は遠い・・・・・・
無言 へたな事を話すと運転手さんに正体がばれるから
早朝は道路もまだ混んでいなくて助かった。
調査員カードを見せて
「お願いします、急いでもらえますか」
この世界(冒険者)は義が大切なんだ
運転手さんがにっこり、頷いてくれた。ありがとう
1時間ちょっとで川越ダンジョンに 買取所の影に隠れて俺はコンビニ袋 さゆりさんとゆうは仮面を準備OK
「監視員は無視してそのまま行くぞ」
「はい」
3人ともバフ、エンチャントを掛け 監視員の前を
さゆりさんが「失礼する」 そう言って
そのまま3人で中に、目的は5階層
じゃまするモンスターのみを倒し、どんどん潜っていく
5階層の入り口に、見えた! 3人が倒れている。
プリーストのさよこさんが懸命にヒールを掛けている。
さよこさんも上級プリーストだから解呪詛ヒールは掛けれるけど1度に3人は厳しい。
「まずいな、ゆう、高谷!」
「「はい」」
俺はバフ3重かけで 1人戦っているゆりこさんの横を抜けてゴーストの前に、そのまま胡蝶双刀に電撃を流しながらゴーストを切りつける、少しづつダメージは与えられながら、壁から引き離す。
壁に逃げこもうとするところを邪魔するように狙うので、ゴーストは逃げることができず、壁から離れて行く
そこにゆうが3面土壁、完全に岩壁に逃げ込むことができなくなり
ゆうが「ゆりこさん!」
逃げることができなくなったゴーストにゆりこさんの鞭が、当たるたびにビリビリっと光って
それは水族館で見た透明深海魚が発光するみたい
なんて見とれている場合じゃないけど、鞭があたるたびに光ってその度にビクッとゴーストがはねる。
2体のアンデッドが復活し、こちらに向かってくるので、俺はそっちに向かう、鉈に持ち替え、2体のアンデッドの首を切り落とし、その切り口に左手にもった胡蝶双刀を差し込み、電撃を流し続けた。
体が黒焦げに、当分は復活しないだろう。
ゆうとゆりこさんがゴーストを倒しているので、さゆりさんの方に行くと、ようやく3人の解呪詛が終わったらしく
最初、チラっとみたときは3人の顔が紫色になっていたけど、ふつうの顔色に戻っていた。
さゆりさんに「おつかれさまです」
「高谷か」
「さすがにさゆりさんでも 3人同時は きついですか」
「ああ、さすがに3人同時ともなると 結構時間がかかったよ、で、他は?」
「今、ゆうとゆりこさんがゴーストをやってます」
「そうか」
さゆりさんはさちこさんに向かって
「大丈夫か?」
「はい」泣きながら 大きくうんうんと頷いているので
「後はまかせた、高谷いくぞ」
「はい」
さゆりさんと俺は俊足で2人のそばに
「ゆう どうだ?」
「はい ちっちゃくなってます」
それを見た俺が
「ほんとうだ、半分くらいになってる」
「うん 鞭が効いてるからね」
ダンジョンの岩壁に逃げることができなくなったゴーストはもう怖くない。
「ゆりこ、このまま行けそうか?」
「はい」
だんだん小さくなって、コアにぐちゃぐちゃのラップがかかったような変な形に、
それを見たさゆりさん
「川越のMのコアはやはり大きいな」
「はい」
「あと1,2発かな?」さゆりさんがそう言うと
最後はジューっと音を立て最後のラップのような皮1枚が粉になって消え、コアが残った。
「ゆりこ」
「はい」ゆりこさんがゴーストのコアを取りに行き、
手にとるとその場に座り込んでしまった
俺がゆりこさんのそばに行くと、ゆりこさんが
「変態マン」そう言って俺に抱き着いて、そのまま俺が倒れ込み、ゆりこさんが抱き着いたまま上にかぶさって
あ~ 柔らかい大きな胸がー 太ももがー
唇がーコンビニ袋1枚隔てて、うわーー
やばいよー俺のもっこり君がーー皆に見られてるーー
どうしよう
あっ ゆうがやってきて ゆりこさんの頭を撫でながら
「よかったですね」
ゆりこさんが落ち着いてきたようで、おとなしくなり、ゆっくり起き上がり
「ありがとうございます」
ゆうに手を引かれ立ち上がった
呪詛を受けた3人も ゆっくり歩いて俺達の方に
さゆりさんが
「アンデッドは時間がたつと復活するから、その前に戻るぞ」
「はい」
皆で岩壁に浮いて見える帰還用移転魔方陣に手をあて 入口まで戻った。
ゆりこさんがずーっと俺の手を握って離さない、もう片方の手は何故かゆうが握っていて、俺は両手がふさがったまま川越の出口を出た。
監視員が俺達に向かって大声で「お疲れさまでした」
驚きながら、でもしっかり礼をする監視人。
俺達は、その恰好のまま買取所の応接室に入って、ソファーに
椅子を3脚持ってきてもらい俺達も座ると
職員さんがコーヒー紅茶とお菓子を出してくれ
落ち着くまで ここで一休み
それからゆりこさんは ずーっと源さんが源さんが
って 俺も 「源さんって頼りになりますよね」
「はい」
ようやく落ち着いてきたので、解散する事に
ゆりこさんが俺の目を見ながら『2週間後』
ってずーっと言っていたので
「はい、2週間後に会いましょう」
そう言って、いつもの黒ガラスのマイクロバスにのって帰って行った
さゆりさんが、川越の5階層に変態マンが映るのはまずい、近いうちにリベンジを手伝うから今回の映像は流さないでほしいとお願いし、ゆりこさんが了承。
帰りにさゆりさんが
「うん、この世界で生きていくには、やはり “義” は 大切だな」
俺はこっそりゆうに
「さゆりさんって 時代劇か何かにはまってるのか?」
「うん、家で昔の時代劇を見てるんだって、それも何かこだわりがあるみたい」
「そっか」刀の2本差しに居合い、なるほどと自分の中で納得
「ふ~ん」
さらっと受け流した。




