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悪女の妹

リシュリアンテの異母妹ファシアリンテ視点の話です。

銀糸のようなフワフワの髪を大きなリボンで高く結い、髪と同じ銀色の睫毛から零れ落ちるような庇護欲をそそるターコイズブルー色の瞳を潤ませて見詰める。私…ファシアリンテ=ワーゼシュオン16才は姉の元婚約者の、クリアイト=ノーガンソン侯爵子息の腕の中にいた。


やっと邪魔な女を追い出せた。


クリアイトは金色の髪の綺麗な顔の子息だ。ウフフ…綺麗、あのお姉様には分不相応よね?私のような正統なワーゼシュオンの血筋の者に相応しい人だもの。


クリアイトと舌を絡めて口づけを交わしてからソファから立ち上がってドレスの乱れを直した。


「お姉様の婚姻の式典に参列する時のドレス選び、明日付き合って下さるわよね?」


「ん?ああ、いいよ」


クリアイトもシャツのボタンを留め直してトラウザーズを履き直している。見目は良いんだけど、どこかぼんやりとしている方よね。まあ見目が良いのが取柄よね。


部屋からクリアイトを送り出して、メイドを呼び湯殿の準備をしてゆったりと湯に浸かった。


ああ、気持ちいい…。今頃帝国の怖い軍人に囲まれて泣いているあの女の顔が目に浮かぶようだわ。本当目障りなんだから…何もしないで王宮の端に堂々と住み続けて、何度刺客を送ってもフラフラとかわして、どういうことよ?


まあいいわ。明日からそんなことに煩わされることも無くなるし~せいぜい婚姻式であの女の惨めな姿を見て、大笑いしてやろうかしらね。どうせ皇太子殿下に王女殿下らしくない、下女のようなみすぼらしい女だと馬鹿にされて、嫌われてるはずだもの。


私の方が王女として格上だと言う事を知らしめてあげる良い機会だものね?ああ、でもどうしよう?皇太子殿下に、私の方が良いとか言われちゃったら~うふふ…その可能性の方が断然高いわよね?


でも荒々しくて武骨な男は好みじゃないのよね。まあ私にはクリアイトがいるからね。


そうと決まれば婚姻式のドレスは最高級のものにしないとね。時間が無いから明日から忙しくなるわ!


■  ◆  ■  ◆  ■  ◆


翌朝、メイドや侍従達から不思議な目で見られているのに気が付いた。


そして、ドレスの打ち合わせに来た洋装店の店主にも不思議そうな目で見られた。


次の日…そしてその次の日も…堪りかねて6日後、朝の支度をしているメイドに聞いてみた。


「ねえ、私に会う度に皆が不思議そうな顔をするのだけれど、どういうことなの?」


メイドはハッとした顔をしてぎこちなく微笑んだ。


「この数日『神の祝福』がおこっておりませんでしょう?ファシアリンテ殿下が体調でも崩されたのかと…でもお元気そうですものね。今晩は『神の祝福』はされないのですか?」


神の祝福?そう言えばあれから癒しの風が全然吹いていない。いつも夜だったから、てっきり夜中にでもおこっていると思ってたのに…。


メイドは、あの癒しで翌朝すっきり起きられると、皆申しておりましたよ?とか勝手に喋っている。


あれって……実際はどうなっているの?


毎晩癒しが勝手に降り注いでいたから、本当に女神が癒しをおこしていたのだとばかり思っていた。私もお父様に伝えてしまったから、正式に王族が奇跡をおこしている!と公表してしまったけれど…。


本当はあの現象何だったの?え?いつからおこってないって…6日前?


嫌なことに気が付いた。それって…それって…あの女が国から出て行った日じゃないの…。


私はその事実に気が付いて、体を震わせた。


「ファシアリンテ殿下の『神の祝福』は本当に効きますものね。実際どんな風に癒しをかけているのです?」


別のメイドがお花の花瓶の水を換えて戻って来て話に加わった。


「私も見てみたいですわ~」


「ね~おほほ」


その2人のメイドはメイド職を辞めさせた。


腹の立つ!私が癒しの女神なのよっ私の気が乗らないから『神の祝福』はおこらないの!


そうだ!あの女と一緒にマーシュガイトラ帝国に行っていた護衛のゴウスリトに帝国の皇太子殿下がどんな方だったのか聞いてみよ~うと、噂じゃ魔物討伐とかで前線に出ていて、物凄く怖い殿下だと聞いたし…きっと岩みたいに大きくて無愛想で怖い方だと思うのね。


「え?マーシュガイトラ帝国のケイハーヴァン殿下ですか?すごい美丈夫でしたけど?」


ゴウスリトの言葉に頭が回らない。


「美丈夫って…戦場に常に出ていて荒々しくて恐ろしい皇太子殿下だと聞いたけど…」


ゴウスリトはキョトンとした顔で私を見た後、破顔した。


「ええ、それはそういう感じの剣士に見えましたけど、お美しい方でしたよ?優しそうでしたし…リシュリアンテ殿下ともとてもお似合いで」


美しい…ですって?帝国の武人は皆、岩みたいにごつくて強面で……嘘でしょう?


それから数日後、お父様…国王陛下に呼び出された。


「2日前マーシュガイトラ帝国で『神の祝福』が起こったそうだ…。ファシアリンテ、お前が何かしたのか?」


血の気が引いた…。


やはりあの女が…?私の異母姉を勝手に名乗るくせに、他国の血を引く卑しい血筋のくせに…何故あの女がマーシュガイトラ帝国の皇太子殿下に望まれて嫁ぐのだっ!


どうして父上はこの縁談を私に教えてくれなかったのだ!ケイハーヴァン殿下が美しいと知っていたのなら絶対にっ私が嫁ぎたかったのにっ!


「そもそもどうして…どうして私が嫁げないのっ!私の方がケイハーヴァン皇太子殿下と釣り合いが取れて…お似合いなのにっ!」


私がそう言うとお父様は、驚きそして…とても悲しそうな顔をした。


「リシュリアンテに婚姻の打診があったのだ。お前にはノーガンソン侯爵子息…婚約者がいるだろう?」


頭に血が昇る…婚約者がなんだっ!マーシュガイトラ帝国の美丈夫の皇太子殿下の方が私にお似合いじゃないかっ!あの帝国よっ?誰がどう見ても身分的に私の伴侶に相応しいじゃない!


「何言っているのよっ私の方が皇太子殿下の妃に相応しいじゃないっ!お父様酷いわっ!私の方が…私の方が…」


国王陛下は真っ青になってオロオロしている。


「だが、リシュリアンテを名指ししてきたのだ。その打診を反故にするなんて戦争の火種に…」


「もういいわっ!お父様には頼らないっ…」


私は私のやり方で…あの女から皇太子殿下を奪ってみせるわ。


 

誤字のご報告ありがとうございます

お読み頂いてありがとうございました<(_ _)>

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