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悪女の妹は悪役…

ブクマ1000件Σ(・ω・ノ)ノ!

ありがとうございます。

このご時世…余儀なく自宅警備をされている皆様…お勤めご苦労様です!

誤字修正しています

ファシアリンテ…ワーゼシュオン神聖国は大人しくしている…はずだった。


いや…私が、私だけがそう思いたかったと言うことかもしれない。皇帝陛下と皇后…そしてケイ殿下と私でワーゼシュオン神聖国から届けられた親書を見て溜め息をついていた。


「うちに言われてもなぁ」


皇帝陛下が、なぁ…と言ってケイ殿下に視線を向けた。ケイ殿下は何か報告書のようなものを読んで頷いている。


「クリアイト=ノーガンソン侯爵子息とお相手のナオリッテ=ミイダーケ伯爵令嬢…実は2人は想い合っていて、クリアイトがファシアリンテ王女殿下に望まれてしまって引き裂かれていた。そしてその2人は今やっと結ばれる…。凄い噂ですね」


「でもそういうロマンス小説みたいなお話、女性は好きよ?」


「ですよね」


皇后に賛同して合いの手をいれる。


今、ワーゼシュオン神聖国ではこのゴシップ記事?で大盛り上がりだ。ファシアリンテ王女殿下に引き裂かれていた2人がようやく真実の愛を手に入れた!


まあ、平たく簡単に言うと、ファシアリンテは癒しの女神から悪役令嬢になってしまったという訳だ。しかも逆婚約破棄をぶちかましてしまったせいで今、噂の2人のキューピット兼悪役令嬢という二足の草鞋を履いている状態だ。イソガシイネー!ファシアリンテー!


「マーシュガイトラ帝国としてはワーゼシュオン神聖国から『変な噂を撒くな!』と言われても知らないものは知らないとしか言いようがない。どうせ噂を撒いているのはノーガンソン家かミイダーケ家のどちらかだろう?いや、一緒に結託しているかもな。兎に角、うちに当て擦ってきてもらっても困る。言うなら自国の貴族達に言えばいい。不敬な噂を広める者は処罰する…とな」


まーた悪い顔してますね、ケイ殿下。本当にケイ殿下がこの噂撒いているんじゃないですよね?疑っちゃうわ。


皇帝陛下は顎を撫でながらう~んと唸っている。そしてケイ殿下が差し出した報告書を見て


「こういう貴族から出てくる噂などは真実とは違っていても、広まるのは早い。これを打ち消すくらいのファシアリンテ王女殿下から良い方向の噂や発表がないと…」


皇帝陛下がそう言いかけたのをケイ殿下が遮った。


「だからと言って、ファシアリンテ王女殿下と私との婚姻の打診?ワーゼシュオン神聖国は正気ですか?これでまたマーシュガイトラ帝国でリシュリーと私の仲に割り込んでくれば醜聞の的になるのは目に見えている」


まさにケイ殿下の仰る通り、悪役令嬢街道まっしぐらですね。今も爆走中ですが…。


「だったら…」


皇后が扇子をパチンと打ち鳴らした。ニイィ…と笑った顔がケイ殿下の悪い顔にそっくりだった。


「もっと醜聞の的にしてあげれば宜しいのではなくて?」


それから暫くして…ワーゼシュオン神聖国の貴族の中である噂が囁かれていた。


「ご存じです?リシュリアンテ殿下が嫁がれましたマーシュガイトラ帝国の皇太子殿下の所へ、ファシアリンテ王女殿下が押しかけて、自分を妃にしろと迫ったのですって…」


「まああぁ…ナオリッテ=ミイダーケ伯爵令嬢の時も間に入って2人の仲を裂いたというのに、今度はリシュリアンテ殿下?!」


「何でも、ケイハーヴァン殿下が随分激高されて、厳重に抗議されているらしいわよ?」


「まあ、もしかして帝国と何かありましたらどうしましょう?」


「ええっ?帝国との間がきな臭いって?」


「原因はファシアリンテ殿下の帝国の皇太子殿下への横恋慕だってよ?」


……噂が噂を呼んで、今はファシアリンテは姉の幸せを横取りする極悪悪役令嬢の立ち位置を独占中だ。噂を広げようと言った、皇后ラジェンシエガ様はずっとメシウマなのか、常にご機嫌だ。


「こうも容易く噂になるものなのね」


「今はクリアイト=ノーガンソン侯爵子息とナオリッテ=ミイダーケ伯爵令嬢の真実の愛という噂の土台が出来ていた所に新たな話題ですから広がりやすいのも必然ですね。嘘でも食いつきます。」


私の説明にラジェンシエガ様は大きく何度も頷いている。


今、ファシアリンテは大人しい。ワーゼシュオン神聖国国内からも、そしてマーシュガイトラ帝国国内からも嫌われている。皇太子妃としてすでに婚姻準備期間に入っている姉姫と一緒に妹まで嫁いでくるなんて前代未聞だし、おまけに第一妃と第二妃という新たな妃制度まで作って、第一妃に収まろうとしている!と巷では大層、噂になっている。


本当に噂とは恐ろしいものだ。ファシアリンテ…あなたもありもしない噂を流されてみて分かるでしょう?


今も噂は爆走中だ。


そして私は医術医院の診療の日だ。


左腕欠損の女の子ミーちゃんの三回目の治療だ。まだ子供なので一気に治療するのは難しく、少しずつ腕を形成している途中だ。今日は初めて手袋を取って腕を見る日だ。念の為に、ミーちゃんの腕周りに魔物理防御障壁と防腐魔法そして…痛みが感じる時の麻酔魔法(睡眠魔法)を何重掛けにしておく予定だ。


「おねーちゃん先生おはよー」


「おはよー昨日は良く眠れた?」


「うんっ!」


ご両親も大きく頷いている。ミーちゃんの左腕の手袋の中を診てみる。うん…魔流が流れて、指先まで行き届いている。皮膚や骨筋などはもう形成が出来ているはずだ。今日は神経細胞…血管などを再生する予定だ。


「ではまずはミーちゃんの周りに魔法をかけるわね」


そう言って事前に決めていた魔法を順番にミーちゃんにかけていく。


「わあっ魔法陣だ!私こんな大きなのに入るの初めて!」


そう言えば、ケイ殿下も大きな魔法陣だなーとか前に言ってたけど…皆もっと小さいのしか作らないのかしら?異世界印?の魔法陣だから他と違うのかな。


「よし…上手くかかったね。じゃあミーちゃんの腕を見ていきましょうか」


ご両親とミーちゃんの意気込みを感じる。助手の男性と医術医院の医師達も皆、見学に来ている。


「手袋外しまーす」


そう言ってゆっくりと手袋の魔法を解術して、ソッと肩から手袋を外していった。


「…ぅうわあああ!」


腕は……再生されていたー!まだ神経などは通っていないとは思うがミーちゃんの左肩から下に右腕と同じ状態で繋がっている。


「重い…ねぇママ!腕って重いよ。ちゃんと腕の重みあるよ」


ミーちゃんは泣かないで笑顔だが、ご両親は大号泣だった。私も涙を流しながらミーちゃんの腕から肘、手首、掌、爪先…細部まで形成されているかを確認した。


「良かった…皮膚や骨も大丈夫みたいね。じゃあ今日はもっと細かな所を治療しましょうね。ここまでくれば後少しだよ」


「はーい!」


私はミーちゃんの腕に再度治療魔法をかけた。無理は出来ないので、一旦放出を止めた。


「どう?腕を触ってみますね」


ミーちゃんの腕をゆっくりと摩ってみた。ミーちゃんの表情が変わる。


「おねーちゃん先生の手が当たってるの分かるよ」


またご両親は大号泣だ。良かったー。


「じゃあ最後にもう一度だけ治療に来てもらえるかな?もうこの手袋は必要ないけど、どうする?」


ミーちゃんは右手で自分の左腕を触ってから、このまま帰りたいと言った。馬車に撥ねられて腕を無くしたのが僅か2才…10才の今まで腕が無いのが当たり前だったのだろう。今は違和感が大きいのかもしれない。


「ミーちゃん、新しい左腕と仲良くしてあげてね?」


ミーちゃんは頬を染めて頷いた。ああ、泣ける。本当に良かったわ。


今日は早めに帰らねばいけない。夜に婚姻式の前に私のお披露目会があるのだ。カルテを棚に仕舞っているとケイ殿下の魔力が近付いて来るのが分かる。


本当にマメだな~。


「終わったか?」


「はい、今参ります」


私は医院の医師に挨拶をしてから、医術医院を出た。


「今から着替えるのだな?あのドレスを着たリシュリーが楽しみだな」


「素敵なドレスをありがとうございます」


ケイ殿下は、歩く足を止めると、懐から手に乗るくらいの宝石箱を差し出してきた。


「今朝、私宛に届いたよ。送り主はクレミルート=カルント…リシュリーの叔父上だね」


「叔父様!」


「手紙も一緒だよ」


まずは手紙を読んだ。


『リシュリアンテ王女殿下へ 突然の婚姻で何もご準備出来ず、姫にはご不便と悲しい思いをさせてしまったと胸を痛めております。ドレスの類を送ろうにも寸法などが分からないので迷っている間に時間が過ぎてしまい申し訳ありません。遅ればせながらご婚姻おめでとうございます。どうか末永くお幸せに クレミルート=カルント』


ああ…。私はその小さな宝石箱を開けた。小さな宝石が散りばめられたまるで紺色の台座に星が瞬いているようなデザインの髪留めだった。


派手過ぎず普段使いも出来る。相変わらず実用性の高いものばかりプレゼントして下さるわ…。


あの国で唯一、私の婚姻を喜んでくれる…人。いつか、本当のことを聞いてみたい。教えてくれるかな?


母の好きな人はあなたですか?そして……私は…。


「リシュリー素敵な髪留めだな」


ケイ殿下の言葉にハッとして顔をあげた。私の涙を指先で拭ってくれるケイ殿下。


「あまり泣いたら目が腫れてしまうぞ」


「あら……それはいけない。お化粧が乗らなくなりますわ」


ケイ殿下と腕を組みながらカルント宰相の話をしながら部屋へと戻った。


さあ~てここからが時間との勝負だよ!カロンとハレニアがすでに部屋で待ち構えていた。


「いつでもこい!」


「姫様…戦地に向かう訳ではありませんので…」


「兎に角、湯殿に入って来て下さいね」


そう言ってハレニアに湯殿に押し込められた。なんだよー私王女殿下だよ~とか心の中でボヤキながら準備をしていった。


湯舟から出ると、カロンとハレニアそしてもう2人のメイドに全身マッサージを受けた。はぁ~気持ちいい。


そしてメイド達にこねくり回されて…見事、お姫様が出来上がっていた。


「この髪留めも使わせて頂きましょうか?」


カロンがそう言って叔父様から頂いた髪留めを最後に留めて完成した。長かったー!


メイド達とハイタッチをしたい気分なのを押し殺して、皇太子妃の続き扉からケイ殿下のお部屋に入った。


「っ!」


ケイ殿下は一瞬固まっていたが、まあそれはそれは魔力を輝かせて私に近付いて来た。


「リシュリー!素敵だっ、皆ご苦労だった」


メイド達が一斉に淑女の礼をしてケイ殿下に一礼をした。メイド達の表情は、やってやったぜ!みたいな達成感に溢れていた。


いいな~私もその達成感感じているグループに入りたいよ!一緒に円陣組みたい!


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