ボッチな文学少女をラノベオタがプロデュース
文化放送「小説家になろうラジオ」の
「タイトルは面白そう」のコーナーに
出てきたキーワードをもとにした短編です。
今回のお題は「文学少女」です。
主人公の高校生、日振理音はラノベをこよなく愛するオタク寄りの読書家。
アカウント名《ビブリオ博士》として、自分が面白いと思った作品を紹介するサイト《ビブリオ博士のノベル見聞録》を運営していて、ちまたで評判になっていた。
紙の媒体でしか小説を読んでいなかった理音だったが、知り合いに薦められて初めて小説の投稿サイトを見た。
そこである作品と出会う。
投稿者の名前は《緋の芽ミルヒ》
陰陽師を題材にした妖怪退治もの。
吸血鬼と人間の恋を描いたダークファンタジー。
ありきたりな題材ながらも、卓越した心理描写に引き込まれ理音はファンになった。
だが公開中の作品数が多いわりに感想を描いている人が随分少ない事に気付いた。
数日後、学校の図書室である少女を見かける。
彼女は乙霧真昼、理音の幼稚園の頃からの幼馴染だが、小学校卒業後、違う中学校に入学し三年間疎遠になっていた。
一週間同じ席でタブレットと睨めっこをする彼女が気になり、近づいてみるとどこかで見た文体が……。
「緋の芽ミルヒ?」
「ビブリオさん?」
真昼が緋の芽ミルヒである事、理音がビブリオ博士である事をお互いが知った。
――そして、作品の話になった。
「SNSとかで宣伝しないのか? 自分の作品を読んでほしいだろ?」
「それは読んでほしいよ……けど」
「けど?」
「SNS……苦手なの」
「苦手?」
真昼は苦笑いしつつ胸の内を語り出した。
「中学の時、学校の怖いグループに目を着けられて……、ネット越しに悪口書かれまくっちゃったの。……本当はもっと作品を知ってもらいたいんだけど……ね」
その時理音の中で昔の思い出が蘇る。
小学生の頃は近所の図書館に集まって児童書の話で盛り上がった。
真昼が「小説家になりたい」と言いはじめ、毎日のように書いた小説を自分に読ませてくれた。
時折、思い通りに書けなくて、悩みながらも努力し描き続けてきた。
たった一人の読者、理音のために。
(たくさんの人に知ってほしい。俺が好きだった、真昼の作品を)
「だったら、俺が宣伝してやろうか?」
「え?」
「《ノベル見聞録》の管理人として、こんなにいい作品を捨て置くわけにはいかない。 俺に任せろ!」
緋の芽ミルヒを推すべく、理音はSNS仲間も巻き込んで布教活動を開始する。
あの手この手でツイッターのRTを稼ぎ、みんなが読みたくなるようブログを介してのレビューを届ける。
目指せ一億PV!青春布教群像劇。