表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神様のおつかい  作者: 七瀬緋織
1/1

《序章》 前編

細々といきます。




やけにはっきりした夢だと思った。

何も無い空間に俺はいて、ただ果てしなく広がる白を見つめている。

明らかに現実ではない。




そのうち俺は自分の身体が見えないことに気付いた。

無いのだ。どこにも。


意識だけがただ、そこにあった。




不思議な場所だ。本当に夢の世界なのかもしれない。







「こんにちは」



っ!!


思わず、声の聞こえた方に意識を向ける。



「はじめまして。調子はどうですか?・・・とはいってもその状態じゃ調子も何もないと思いますけど」



そこにいたのは男と女の二人。男の方は全身黒ずくめで、女の方は白を基調とした服を着ている。普段はそう見ない服装だが・・・コスプレか?



「初対面なのに失礼だな、君は」



・・・俺は何も言って無い。俺の考えてることがわかるのか



「おお正解正解」


正解らしい。

にしても人の思考を読むなんて・・・ちょっと不快だ。



「ごめんなさい。本当は私達もやりたくてやってるわけじゃないんです。あなたには今身体が無いでしょう?だから思考を読まないと意思の疎通ができないんです」



言われてみれば俺は今喋ることができない。

そういうことなら仕方ないか。こちらも初対面の人の前で何も反応出来ない、なんてのは心苦しい。


「ご理解いただき感謝します」




「・・・シンシア、俺たちは神なんだから、人間にかしこまった態度をとる必要はないと思うんだけど」


「そんなこと言っちゃダメですよ魔神さん。こちらはあくまでお願いする側なんですから。それもあなたが」


「・・・分かったよ。でも、俺はこのまま行かせてもらうぜ」



神?魔神?一体この人たちは・・・?


「やっぱり気になっちゃいますよね〜当然です。では自己紹介をしましょう」


そう言うと彼女は少し胸を張り、堂々と名乗った。



「私はシンシア。この世界、エンディスを作った創造神です」



創造神・・・。やっぱり頭の弱いコスプレ少女なんじゃ


「なんですか?」


こちらを見てニッコリと笑う創造神シンシア。

冷や汗をかいた気分だ。身体無いけど。



しかしこの状況を考えると、多分嘘じゃないんだろう。少なくとも人間に、こんな不思議な状況は作れないはずだ。


「・・・まあいいです。ともかくあなたが持っている神のイメージとそう変わりは無いのでそう思ってください」


確かにその姿は誰もが見ても神とわかるような姿ではある。無宗教の俺でもなんとなく神聖な雰囲気を感じるくらいだ。



しかし気になるには男性のほうだ。魔神と言っていたが・・・悪い感じの神なのか?


「なるほど悪い神か・・・。間違ってはないが少し違う。俺の悪はな、必要悪だ」


必要悪・・・。


「俺は魔神。俺の役目はただ一つ、魔王として君臨し世界に混沌を呼ぶことだ」


混沌を呼ぶ?なんでそんなことを?


「必要悪の言葉のとおり、簡単な話だ。生き物は共通の敵が居れば協力するし、破壊無くして創造は有り得ない。そうだろ?」


だから生き物を殺すのか・・・随分と横暴な話だ。


「どんなものにも色々な側面がある。神々の世界でこの『悪』の側面を引き受けたのが俺ってだけの話だ」


そう言われると少し納得できる。神々ってのは思っていたよりも人間臭いみたいだ。


「そりゃそうだろ。だって人間は新たな神々として上化するためにいるんだからな」


なんと。


「もちろん全員じゃない。言い方は悪くなるが厳正な選別をしてる。上化するやつなんて滅多にいないんだ」


「魔神さん、それ以上は禁則事項だから言っちゃダメですよ」


「ああ悪い。つまりは色んな世界があって色んな創造神がいるって話だ」



色んな世界、つまりさっき言っていたエンディスというのは、俺のいた世界とは別の世界なんだよな?


「そうですね、あなたのいた地球という世界にも創造神はいます。少し変わった方ですが」


変わった?


「そうだ。せっかくの世界なのに魔法を使わないし、魔神である俺を呼んだりもしない。そのくせ世界はきっちり回ってる」


「いいんですよ、世界の在り方は神それぞれなんですから」


地球はかなりイレギュラーな存在だったらしい。

それにしても創造神と魔神か、神に会うなんて人生不思議なこともあるもんだ。








「では私達のことはこれくらいにして、次はあなたの話をしましょうか」



そういえば自己紹介の途中だったな。俺の名前は、、、



たつみ 共一きょういち 25歳 大手広告代理店勤務のエリート 独身 一人暮らし 家族は両親と弟が一人 最近の趣味はレトロゲームで遊ぶこと」


そんな細かいとこまで知ってんのかよ






「そして記念すべき25歳の誕生日に、付き合っていた彼女に刺されて死んだ」





・・・・・・・・・





「覚えてるか?」



・・・やっぱり、死んだのか。



「そうだ、君は死んだ。だが安心しろ、死なんてそう落ち込むことじゃない」




・・・落ち込んでるわけじゃないよ。ただ申し訳ないんだ。


「申し訳ない?どういうことですか?」


せっかく俺と付き合っていてくれたのに、こんな結果になったことだよ。俺の配慮がもっと足りていれば、彼女が俺を殺すことは無かった。


「それは違います!あれは巽さんにはどうしようもないことでしたし、彼女の方も、、、」


いいんだ。


「でも・・・」


大丈夫だよ。それにもう俺は死んでる。なんの用で呼ばれたかは知らないけど、あとは成仏するだけだ。







「あーそのことなんだけど、君には生き返ってもらう」


・・・ん?


「君を呼んだのは、エンディスのある俺の忘れ物を取ってきてもらうためなんだ」



んんんん!?!?




仏の世界じゃないけど成仏です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ