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大好き  作者: ナード
8/19

8 文化祭

 秋にはみんなの楽しみ文化祭。

 A組はクラス参加なしだったんだけど、B組はクラス参加して執事喫茶だって。栗原くん執事やるって聞いたから、これはぜひ見に行かないと。

 B組の執事喫茶、すごく混んでる。栗原くんだけじゃなくて、江藤くんっていうガッチリした人の執事もなかなか人気だったし、高橋くんっていうちょっとちっちゃい子の執事がまた一部熱狂的なファンがついたみたい。

 入り口に“当店は紅茶一種類のみ提供となります。またメニューはございませんのでオーダーも含めてお楽しみください”ってポスターが貼ってある。え?

「おかえりなさいませ、お嬢様」

 ちょうど私、栗原くん担当になった。

 栗原くん、カチッとしたスリーピース、白手袋、ポケットチーフ。ウィングカラー、フレンチカフスの白いシャツにストライプのネクタイ。カフリンクスは綺麗なグリーンのスクエアタイプ。バッチリ執事スタイル。

 これすごいの。衣装に着られている感じゃなくて、ちゃんと着こなしているの。どうなってるの?

 席に案内される。

「栗原くん……?」

「お嬢様、私のことは栗原、とお呼びください。どうなされましたか?」

 あ……お楽しみくださいってことは、もしかして。

「栗原、少し喉が渇いたの。なにか飲み物、お願いね」

「畏まりました」

 たぶん、こういう感じ、でいいのかな。

 すっと礼をして立ち去る栗原くん。ドキドキする。

「お待たせいたしました」

 眼の前に置かれた紅茶。オレンジスライスが浮いてる。不思議そうに見上げる。にっこり微笑む栗原くん。

 カップを持ち上げる。ほわんと立ち上るオレンジの香り。こくん、と飲む。おいしい。

「失礼致しますお嬢様、私雑務のためしばらく離席致します。何かございましたらベルでお呼びください」

 あ、そういう……そうよね。私が独り占めしてたら困るものね。

「ええ、わかったわ。ありがとう、栗原」

 礼をして立ち去る栗原くん。かっこいいのでつい目で追ってしまう。

「おかえりなさいませ、お嬢様」

 新しいお客さんの接客をしている栗原くん。ちくん、と胸が痛い。

 オレンジの香りの紅茶が、少し切ない味になった。

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