6 梅雨空
自転車通学している子にとって、雨は敵。
そして今は6月も末、梅雨真っ盛り。
「失敗したなあ……」
朝、天気予報は晴れ。午後の降水確率30%。その30%を引いちゃうのよね、私。
大丈夫、って思って傘を持たずに学校に来て、帰りも持つかなーって思いながら電車に乗ってたった10分で天候悪化。結構シトシト降ってる。どうしよう。
最寄り駅の改札口を出て駅から繋がるアーケードの端っこで悩んでいると、後ろから肩をツンツンされ、声をかけられた。
「高木さん、どうしたの?」
「あ、栗原くん。あのね、朝天気予報30%だっていうから傘持ってきてないの」
「あー……イヤじゃなければ、家まで送ろうか?」
「え……?」
てっきり嫌われていると思ってたから、びっくり。
「あ、じゃあ傘使って。俺はどうにかするから」
「どうにかって、どうするの?」
「走って家まで帰る」
「……風邪引いちゃうよ?」
「大丈夫。バカは風邪引かない」
「ダメよ。栗原くんの傘なんだから……一緒にお願いします」
相合い傘。ちょっと照れちゃう。
バスを使って帰ることにしたので、まず駅前のバスターミナルに移動。ここまではたいしたことないのよね。ほとんどアーケードとつながってるし。
ただ同級生たちに見られてドキドキしてる。栗原くんと私、どう見えてるんだろうって思う。
「ほら、バス来たよ」
バスに乗る。雨だからそこそこ混んでたけど一人席が空いてた。
「ほら、座って」
栗原くんが譲ってくれた。その席の前に立ってる栗原くん。下から見上げてもかっこいい。顎のラインとかなんていうか、ドキっとする。なでてみたい。
手を出しかけて、気がついて引っ込めた。
「ちょっとエアコンキツめかな……寒くない?」
よかった、気づかれてない。栗原くん、吹出口を気にしていたからこっちを見てなかったみたい。そして吹出口の向きを変えてた。そういうところ、栗原くんらしい。
バスに乗って15分。色んなお話をした。おばあさんが亡くなったって前に聞いたんだけど、そのときよりもショックはなくなっているのかだいぶ明るくて自信たっぷりの栗原くんに戻ってた。よかった。
お話していると最寄りのバス停に着いた。バス停には小さな屋根があるので、とりあえず降りて栗原くんを待つ。
「家まで案内してね」
栗原くんは右手に傘を持って私の左に立つ。歩道をてくてく歩いて、私の家まで案内する。
すぐ横に顔があって、吐息すら感じるくらいに近くて。何を話していたのかあんまり覚えてない。夢みたいな10分だった。
「あ、私の家、そこなの」
「了解。じゃあ、玄関まで行きましょうか、お嬢様」
玄関にたどり着いて栗原くんを見る。左肩……びしょ濡れ……。私は足元くらいしか濡れてないのに。
「じゃあ、ここで。また明日」
「あの、栗原くん、左肩」
「え、あ、あー……バカは風邪を引かないし、ここから家まで5分くらいだし。ヘーキヘーキ。じゃあね」
お礼を言う間もなく走って行っちゃった。