4 図書館②
お昼。一旦片付けてご飯にしようかしら、お腹も空いたし。
教科書、参考書、ノートをカバンにしまっていると栗原くんがこっちを見る。
「高木、帰るの?」
「ううん、ご飯にしようと思って。今日はお天気いいって朝ニュースで言ってたからおべんと作ってきたんだ」
「へー」
「栗原くんはどうするの?」
「……一応、持ってきてる」
「じゃ、一緒にどう?」
さらっと誘ったつもり。でもドキドキしてる。顔に出てないといいんだけど。
「……いや、いいや」
真っ白。そっか……。
「昼飯、これなんだよ」
カバンをゴソゴソして取り出したのはスナックバー。
「え?」
「ばーちゃんいまちょっと具合悪くてさ。俺まだちゃんと料理出来ないから」
恥ずかしそうに微笑む栗原くん。
「そうなんだ……あのね、おべんと、サンドなの。少しくらいなら分けられるから、一緒に食べよ?」
ドキドキする。あのね、あのね、私、栗原くんのことが。
「ありがとう。でも食べられないんだ」
止まりそうになる。え?なに?何を言っているの?わからない。
「食べられないんだ」
目を伏せて小さく呟く栗原くん。え、でも。私は。いや、そんなつもりはなく。でも、え?
「あ、ああー、そっかー、あれ、アレルギーみたいな?」
絞り出すように、囁いた。ギリギリ言えたのが、これ。
「いや、違う。アレルギーじゃないんだ」
小さく首を振りながら、寂しそうに言う栗原くん。胸が、痛い。この痛みは、何?
「これは、俺の問題。高木は悪くない」
小さくつぶやく栗原くんの顔。
「ごめんな」
謝られる。違う。悪いのは私。無理に誘った私。
「今日は、帰るね」
栗原くんは勉強道具を片付け始める。止めなきゃ、止めなきゃ。
「じゃあ、またね」
小さく手を振り、寂しそうに笑う栗原くん。
「うん……またね」
でも何も言えなかった私。
ご飯、食べる気なくして、そのまま家に帰った。サンドは妹が食べてた。