2 体育
男女別に体育をやるのでA/B組合同で体育。いつもちょっとドキドキ。
今日は天気が悪いので体育館で。男子はバスケット、女子はバレーボール。コートが4つ取れるくらい至高館高校の体育館は広い。
あ。栗原くんだ。背そんなに高いほうじゃないんだけど、なんていうか動きがすごいの。二人くらい付かれても余裕で振り回して振り切っちゃう。
3ポイント普通に決めちゃう。すごいなあ。
「かなぴーーそろそろ交代だよー」
同じクラスの相田加奈子さん。カナどうし仲良くしよって言われて、高校に入って初めて出来たお友達。ちっちゃくって可愛いんだよ。
私も相田さんも体育は苦手組。相田さんはちょっと身長が、私は単に運動神経がないの。
トスを上げるときは指を三角にして、って最初に聞いて。
「かなぴー!いったよ!」
三角意識しすぎて、その三角のまんなかをボールが抜けました。
「あれ?」
白い天井。ベッドに横になってる。
「あ。気がついた?」
白衣を来たメガネの女性。
「おめでとう、1年生で最初の保健室利用者だよ、高木可奈美さん」
バレーボールのトスに失敗して顔で受けて気絶した、ってことよねこれ……恥ずかしい……。
「まだ30分くらいしか経ってないから戻れば授業中だぞ」
「はい、戻ります」
ベッドから出て、靴を履く。
「ところで」
養護の先生が私にとんでもない質問を投げてきた。
「お前をお姫様抱っこしてきた男の子、彼氏か?」
え、え、えーーー⁉お姫様だっこ!全然覚えてない……初めてのお姫様抱っこ……しょっく。
「そ、そんな人いませんっ」
「気を失った人をお姫様抱っこするって結構きついんだぞ。関係ない子にやろうって気には普通ならん。それにこの年頃の男の子は照れるからな」
「先生、男子の名前、わかります?」
「あー、ゼッケンには栗原って書いてあったぞ。お礼言っておけ」
養護の先生はなんか書類を書いている。よかった、顔見られなくて。今多分私、赤い。バレーボールのせいだけじゃない。
「おせわになりました。授業に戻ります」
「おう。この部屋はいつでも開いてるからな。いろいろ悩みがあるなら来いよ若人」
「はい、その時はお願いします」
先生に言われたことを考えながら、体育館に戻りました。
「お、かなぴー復活」
相田さんに歓迎された。
「ねーねーかなぴー、栗原くんってどんな関係なの?」
「どんな……うーん、お友達?」
「そうかなあ?お友達だったらあんなことしないよ?さっと来てタオル掛けて隠してくれて、そのままお姫様抱っこして、先生に『保健室行ってきます』って」
ああ、彼ならそうするだろうなって予想できる。スマートで、かっこよくて。
でもその優しさは私じゃなくても発揮されるのかな。
ちょっとだけ、ズキンとする。