17 クラス替え
二年生。クラス替え。神様あれからお賽銭入れに行ったんだからお願い。
貼り出されているクラス表を見る。
……やった。栗原くんと同じD組。神様ありがとう!
2-Dの教室へ。出席番号順に仮割当された席に座る。しばらくすると来た!栗原くんだ。
栗原くんは教室に入ると執事喫茶で一緒に執事やってた江藤くんのところに行ってグータッチからすごい細かい手の挨拶。なにあれ。その後もうひとり知らない男の子と同じやり取り。
ぐるりと教室を見回す栗原くん。あ、目が合った……と思ったのに素通り。え。
見た先は大山さん。バスケ部エース候補。スタイルいいんだこの子。で、その隣にいた男の子となんか喋ってる。気になるけど……でも男の子で話しているところに行くのはちょっと怖い。
でも、少し勇気を出して、栗原くんのところへ。
「おはよう、栗原くん」
「ああ、おはよう。同じクラスになったんだ」
「そうだよ。1年、よろしくね」
「ああ」
栗原くんの脇にいた知らない男の子がペコリと頭を下げる。
「児島龍汰。栗原のソウルメイトだ」
「何言ってんだお前。ソウルメイトじゃねえだろ」
楽しそうにはしゃいでいる栗原くん。初めて見る表情。心がちくん、と痛い。私の前では見せたことのない笑顔。
「高木可奈美です。はじめまして」
「江藤智明だ。栗原とは1年時に殴り合って以来の友人だ」
殴り合い⁉
「江藤、勘弁してくれよ……あれは俺が悪かったって言ってるだろ」
「フン、一生言ってやる」
また、私の知らない栗原くん。ちくん、ちくん、とする。
「ところでさ、栗原。お前、高木さんと付き合ってるんだろ?」
「あー、まあ……そうだな」
言葉を濁す栗原くん。そうだよね。恋人のフリ、だもんね。
「どこまで行ったんだ?」
児島くんが肘を栗原くんにグリグリ当てる。
「そうだな……って言えるかどあほー」
ぺしん、と後頭部を叩く栗原くん。それを腕組みして見ている江藤くん。
「栗原。そのへんにしておけ。あと、人には誠実にな」
「……わかってる」
沈む栗原くんを見て、心が痛い。手を取って、ブンブン振って握手。
「ほら、元気出そうよ、ね」
「そう……だね」
栗原くんは沈み込んだまま、だった。私じゃ、だめなのかな。偽物の恋人、だもんね。