14 バレンタインデー
みんなそわそわバレンタイン。チョコレートに愛の呪文を刻んで混ぜて。届け、私の思い。
うん、私のキャラじゃないのはわかってる。わかってるけど、いいじゃない。
とはいえ、チョコレートを作るのは難しいので、おしゃれなチョコでもって電車に乗ってデパートへ。
「た、高い……」
お値段異常。こんなちょっとでこんなに高いの。うーん、お小遣い足りるけど、足りるけど……。
清水の舞台から飛び降りる、なんてものじゃなくてスカイツリーから飛び降りる覚悟で買いました。
2月14日は土曜日。ご近所アドバンテージのある私は直接栗原くんのお宅へ向かおうかと思っていたところにメッセージが。
栗原くんからだった。
『助けて。恋人のフリをお願いします』
何、これ。
『どうしたの?』
返答なし。でも栗原くんからのSOS。助けに行かないと。家を出ててくてく2ブロック先へ。
インターホンを押す。
「はい」
「高木です。こんにちは」
「高木さん、こんにちは……うるさい静かにして!」
「……栗原くん?」
「いや、何故かクラスの女の子が4人来てるんだよ……高木さん、入って」
ドアの鍵の外れる音。
玄関に迎え入れてもらったところで耳打ち。
「ごめん、悪いけど恋人の振りしてもらえる?悪いんだけど……頼めるの、高木しかいないから」
「……なんとなくわかったわ。いいよ」
廊下をぽてくり歩いてリビングへ。ソファーに座っていた4人が一斉にこっちを向く。目が怖い。
「だから言ったじゃないか。俺にはカナがいるって」
「だってー」「ねー」
「あ、く……慶太。これ、バレンタインの」
飛び降りてよかったスカイツリー。
「ああ、ありがとう」
栗原くんはチョコ受け取るとすっと肩を抱いてくれた。神様、お賽銭5円にしてごめんなさい。こんな運命が待っていたなんて。次ちゃんとお賽銭入れるね。
「君たち、これから俺らデートなんだから、遠慮してもらえると助かるんだけど」
「えー」
栗原くんの言葉にどんどん目つきが怖くなる女の子。私、明日から生きていけるかなあ……。
「先に言っておく。カナに何かあったら、お前らを真っ先に疑う。たとえお前らがやってなくても、だ」
4人はすごすごと出ていく。一応栗原くんは玄関どころか門の外まで追い出しについて行った。
「助かった……ごめん、本当にごめん。このチョコだけど」
「あ、それ栗原くんのために買ってきたやつだから大丈夫だよ」
「あ……え……え?」
「ふふ、かわいい慶太」
困惑して混乱している隙に栗原くんのすべすべほっぺにキスしてやった。神様ありがとう!