13 年始のお参り
初詣に近所の神社への参道へ入る道。
家族で初詣の予定だったんだけど。
神様、ありがとう。栗原くんと会わせてくれて。今日は神社なのでお賽銭奮発しちゃう。100円だけど。
家族から離れて栗原くんのところに向かう。お父さんはついてきたそうにしてたけど、睨んで追い返した。
「こないだはお母さんがごめんね」
「別に気にしていない」
栗原くんはなんかすごいコート着てる。形は、シャーロック・ホームズが着てるみたいな形の黒いコート。膝を超えたあたりまでの長さのロングコートで前を留めていないので下のスーツ姿も見える。あれ、執事喫茶のときのスリーピース……?確かに黒いスーツだったけど。あと黒いネクタイ。
「初詣?」
「違う。この先のお寺が菩提寺なんだ。月命日なので」
「あ……ごめん」
「人が亡くなる日は選べないからね。誰かの誕生日は、誰かが亡くなった日。そういうものだよ」
寂しそうに笑う。
「でも、もうちょっと長生きして欲しかったな」
小さくつぶやいていた栗原くん。
「私も、ついて行っていい?」
「なんで?」
「だって、栗原くん、辛そうなんだもん」
「そっか……」
突然栗原くんは顔を両掌でパンパン叩いた。
「あー、ダメだな俺。よし、大丈夫」
少し赤くなった頬でニカっと笑う栗原くん。
「ふふ、どうだ、いい男だろう。だが、惚れるなよ。俺はダメな男だからな!」
サムズアップする栗原くん。その手を握ろうと伸ばしたときに彼はするりと抜けて走り去っていった。
「じゃあね高木さん!初詣ちゃんとして来るんだよー」
お賽銭は5円にしました。神様のバカ。運命いじるならちゃんと最後まで責任もってよ。