12 年末のお買い物
冬休みは、好きだけど、嫌い。
夏にも同じこと考えた気がする。
でも夏と違うのは、栗原くんち、知ってるもんね。行かないけど。
やっぱり会えないのは変わらない。辛い。
つまらないなって思いながら、駅前のスーパーまで年末年始のお買い物。とはいえうちはあんまりしっかり年末年始を祝うタイプの家じゃないので、適当にお餅と予約していたスーパーのオリジナル三段重を受け取って帰るって感じ。
スーパーのお野菜コーナーで考え込んでいる美少年発見。神様ってやっぱりいるんだって思った。別に信じてないけど。
「栗原くん、こんにちは」
「高木……さん、こんにちは」
私の後ろにお母さんがいたので、普段の呼び捨てモードから敬称付きへ。気にしないのになあ。
お母さんは栗原くんを見てちょっとびっくりしてる。日本人にしては色白で、すっと通った鼻筋で綺麗な目をしていて美少年だと思うんだよね、私。
「カナが言ってる栗原くんて、この子?」
耳打ちされた。小さく頷く。
「お母さんににて面食いねー」
お父さん別にかっこよくないじゃん……。
「栗原くん、今日、どうしたの?こんなところで」
「今日の夕飯をどうしようかな、と。一人分だから難しいんだよね」
「え、年末年始も一人なの?」
「いつもならばーちゃんと一応両親も一緒だったけど、今年は仕方ないかな、たぶん」
栗原くんはそういうと寂しそうに微笑んだ。
「じゃあ、また」
「あ、ちょっと待って」
小さく手を振り、会釈して立ち去ろうとする栗原くんをお母さんが呼び止めた。
「栗原くん、いつも可奈美がお世話になってます」
「いいええ、こちらこそいつもご迷惑をおかけして。ものすごく助かってます」
「年末年始、一人って?」
「今年祖母が亡くなって以来、両親は帰って来なくなりました。ふたりとも仕事が忙しいんです」
「あら、じゃあうちに遊びにこない?うち、女の子ばっかりでお父さんがいつもぼやいているから」
「……すみません。失礼します」
栗原くんはそれだけ言うと私達から離れていった。
呆然とするお母さん。そして私。
「え……あれ、あら?なんで?」
「お母さんのおせっかい……」
あとで栗原くんに謝らないと。でもそのチャンス、いつなんだろう。