ある⚫︎⚫︎の回顧録 ー楽の章ー
目を開けると暗い空間にいた。
何も見えない。
ここは…どこだ…??
上半身を起こしザッと周りを見回した。
???
夢…なのか……?
私は自分の頬を抓ってみる。
痛い…
この状況が夢の中ではないと認識した。
ならば、捕まったのか…?
しかし、手や足は自由に動かせている。
落ち着いて、周りを見回してみる。
よく見るとあたり一面に赤や白…青白い何かが無数にある。
点だ。点がたくさんある。
しかし、目を凝らしてみても、その点がなんであるのか私には分からなかった。
立ち上がろうと手を動かしたその時、指に何か当たった。
ようやく暗さに慣れてきた目がその輪郭を捉える。
丸い石のように見えた。
それに手を伸ばし、持ち上げてみた。
あまり重さは感じられなかった。
その丸い石のようなものをくまなく見るため、手を動かしたその時…
添えていた親指の部分が沈んでいくのが分かった。
私の頭が好奇心で満ちていくのが分かった。
そして、親指を深く…深く…沈めてみる。
すると、
…………
ザーッ、ザー、ザー、ザーッ
大きく耳障り音が聞こえてきた。
ビックリした私は思わずそれを手放してしまった。
コテン、と音を立てて石のようなものは転がり落ち、私の踵辺りに転がっていった。
……ーい、ザーッ、ザーッ…
…き、きこ…え…ザーッ
バン!バンバン!
何かを叩く音がする。
おっ、おっ?
やっと…ランプが点灯したー!
今度は男性の声が聞こえてきた。
それは少年なのか大人なのか区別ができないほど曖昧な声色だった。
やっほー!!
これを聞いてるあなたはラッキーだねぇ。
私の秘密を覗いちゃうなんて……
いけない子だー❤️
フフッ❤️
「今、お前はだれ?」と思ってる?
ンフフ…それはな・い・し・ょ❤️❤️
フフフ、ヒヒィ…だって、教えたら面白くないでしょ?
私を見つけにきて❤️
なーんてね、ヒヒヒ、ヒヒヒ…フフフ…
あなたは答えが分かってる問題なんて面白くないと思わないかい?
こいつは何を言っているんだ?
私は頭が真っ白になった。
しかし、声の主はそんな私を置いて話を進める。
「これは何?」とかって思ってる?
これはねぇ…
驚くなかれ、私が作った…声を貯めることができる装置なのだー!!
じゃじゃーん!!!
凄いでしょ?凄いでしょ?
褒めて、褒めてー!!うん。うん。
まぁ、私だけじゃなくて…きぃちゃんにアドバイスをちょこーーとだけもらったんだけどね。
ホント、ちょこーーーと。
あー、そんな話はどうでも良かったんだった。
それよりさぁ…600年ってどれくらいの年月かってあなたは想像できるかい?
600年っていうと君たちだとどれくらいに感じるのかな〜??
私はどうだったかって?
ん〜…一言で言えば苦痛だよーねーはぁ……
もう、ごめんだね。うん。
あーいうのは。
手を広げ、辟易した顔をしている姿がその声からは容易に想像できた。
でもさ、待ったかいがあったんだよー!
よーやく楽しいことが起こる気がするんだよね。
いや、起きるはず!!
だから、テンション上がってます。私。はい。
それで、この記念すべき日を祝うべく記録を取っておこうと思ったわけなのです!!
つまり……ザーッ、ザーッ
あ、ザーッ…あれ、…ザーッ
またも大きくけたたましい音が発生し、声の主の声はかき消されていく。
ザーッ…もう、ま…ザッ、ザーッ、
やり直し…ザーッ
…………………
やかましい音が消え、再度静寂が戻った。
なんだったんだあれは?
600年?なんの話なんだろうか?
いや、そもそもあいつはだれなんだ?
自分の身に起きていることを整理するために眼を瞑る。
いつしか、気が遠くなり身体が浮くような感じがした。
そこで、意識は途絶えた。