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楽園変生 第一部 ──不死の随伴者──  作者: 紅葉 昂
第一部【不死の随伴者】
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第020話

「昨日の稼ぎは……七千ジェリーだったっけ」


 葵が乃愛の正体を知ってから三日後。村はずれにある屋敷の庭でボソリと呟いた葵は、切株の上に立たせた丸太へ右手で握り締める斧を振り下ろす。ズドンっと大きな音と共に丸太は両断され、乾いた音を立てて左右に広がるように転がった。

 溜息を吐き捨て、次の丸太を置いて同じように叩き割る。それを何度も繰り返す中、葵は昨日までの出来事を思い返していた。


『起きたか、葵』


 乃愛の正体を知ったあの日、二人はこれからの話は明日にしようと決めて、そのまま互いの寝室へと向かい一先ず睡眠をとる事にした。翌朝、一階にある居間へと続く階段を降りると待っていたと言わんばかりに壁に背中を預けた乃愛がいた。

 後ろ手に組んだ両手で軽く壁を押しては背中を壁から放し、下から覗き込むように腰を折って葵の顔を見上げる彼女はどこか上機嫌のようだった。


『眠そうだな。早く顔を洗って来い』


 そう促されて一度洗面台に行き顔を洗って戻って来ると、居間の中央にあるテーブルには朝食が並んでいた。先程とは一転して何やら不貞腐れている乃愛が座っているので対面席に座り、乃愛が手を合わせて「いただきます」と食べ始めたのを見て葵もそれに続く。

 先程まで機嫌がいいように思っていた乃愛の急変振りに葵は首を傾げるも、乃愛が黙って食事している故に問い掛けはしなかった。

 と、いうよりも別に気になる事があった。


『あの、確かクーラさんですよね』


『はい』


『何をしてるんですか?』


『メイドとして傍に控えております』


 そんな事は当然見てわかる、と言いかけて葵は口を閉ざす。つい最近まで一般学生だった葵にとって傍にメイドが佇んでいる状態での食事というのは些か難しい。

 端的に食べ辛い。


『私もそう言ったんだけど聞かないんだ。食事の用意も私にはさせてくれないし』


『当然です。異世界でどうだったかは知りませんが、帰還なされた以上御仕えし、生活の補佐をさせて頂くのは私の使命です』


 二人のやり取りを見て乃愛が不貞腐れている理由を悟る葵。葵にとっては食べにくい事この上なかったが、七年もの間主君を待ち続けてようやく会えたのだから無理もないだろうと葵は考え、クーラから意識を背けて食事に集中し、乃愛が食べ終えるのを待って本題に入った。


『聞きたい事は色々あるけど、とりあえず知っておかなきゃいけないのは僕と咎崎の心臓の事だと思うんだ。……いや、そもそも法則って何なの?』


 葵の言葉に乃愛は席を立ち、葵に背を向けるようにして窓際へ歩き出す。窓に手を添え、外で遊ぶ村の子供達や談笑する老人達や働いている大人達を、乃愛とは違う種族である人間達を眺める。


『法則はそれぞれの魔族の王たる資格。例外を除いてあらゆる種族に一つ、一人だけが持つ力。生まれた時から備わり、後天的には発生しない才能、か。使用に多大な集中力は必要だが、基本は魔力や体力を消費せずに行使出来る。また、法則は魔法などで相殺する事や妨害する事は出来ない。わかりやすく言い換えると、この世界がゲームなら法則はチートだな』


『それだけ聞くと魔王はボスっていうより卑怯者みたいだね』


『あながち間違ってはいないと思う。法則は自分の宿す願望のままに超常現象を引き起こす訳だからな。……魔王は全員我儘なんだよ、私も含めてな』


 乃愛は顔を振り向かせて悪戯っぽく笑って見せた。そういえばその我儘を葵に押し付けたのは他ならぬ乃愛だったと葵は苦笑いを浮かべる。面と向かって卑怯者呼ばわりした訳で、意図してないのだから笑うしかない。


『冗談は置いといて、法則は所有者の身体のどこかに模様として浮かび上がる。その模様を視認する事でどんな願いを起源とし、どんな能力なのかを知る事は出来る』


『へえ、もし魔王と戦う時に相手の法則を知る事が出来たら……』


 と、そこまで言って葵は口を止めて立ち上がり乃愛に近寄ると、彼女のつま先から顔まで視線を泳がせた。

 模様は即ち刺青のようなものだろう。違いは先天性か後天性か、どちらにせよ身体に刻まれているのなら魔王である乃愛の肌にもその模様があるハズだった。

 が、ない。肌の露出が多い服を着ている乃愛のどの部分にも、模様は存在していなかった。


『えっと、葵。意図は察せるがその……』


 両手で肌を隠すように身を捩っては、頬を赤らめる乃愛が葵を見上げて訴える。そんな彼女を見て、傍から見れば自分が何をしているのか察した葵はビクリと身体を跳ね上がらせた後に一歩後退りした。


『ご、ごめ──』


 視線を遮断するように葵が右腕で顔を覆うようにした所で物音がする。二人の視線は互いを離れテーブルへ。するとクーラが落とした食器を拾っていた。


『申し訳ございません、ルシフェリア様。つい、手が滑ってしまいました』


『そ、そうか。破片で指を切るなよクーラ』


──ついって言った。


 けして口には出さず、葵はクーラの心境を悟る。


『えっとな、葵。法則の模様は意識すれば消せるんだ。代々魔王として生まれた者はどの一族もそれが出来るようになるまで隔離される。考えても見ろ、私の身体に模様があったら刺青だとか言われて高校なんて退学だ』


『た、確かに……』


 頷きながら、葵は自分の胸に左手を添える。その手に心臓の音を感じた。破壊されたハズの心臓、その鼓動はけたたましく響き、どうしてか静まらない。

 ふと、それが不思議に思えた。確かに乃愛の肌をジロジロと見てしまった事に失敗したとは思ったが、別に色眼鏡で見ていた訳ではなく、乃愛の女性の部分を見ていた訳ではないのだ。


 それなのに、ここまで動悸が激しくなるだろうか。


 どうしてそれを“恥ずかしい”と感じたのか。


『そういえば、私の法則の話だったな』


 頬を染めていた乃愛はそう言いだし、葵の右手を両手で掴む。その右手は乃愛の両手に引かれ、誘われるようにして乃愛の胸の谷間に添えられた。


『私の法則は心臓を同化させ、一生を共に生きる契約だ。私の心臓はこことそこにあり、私の心臓はお前の物で、お前の心臓は私の物。例えお前の胸がまた貫かれても、私が生きている限りお前は死なない。そういう法則だ』


 左手に感じる自分の鼓動、右手に感じる乃愛の鼓動。それは完全に同じタイミングで時を刻み、徐々に早く荒く鳴り響き始めていた。


『あ、あのさ咎崎……』


 しかし、この状況ではそれは心臓が一つでなくとも同じ事。


『あ』


 今更気付いたのだろう。乃愛の顔が見る見る内に紅く染まり、放す所か自身の谷間に当てた葵の手を強く握り始める。

 どうやら混乱したようだと葵は悟るが、無理矢理引いては乃愛を引き寄せる形になり、指を動かす訳にもましてや押すような事をしては押し倒す形で二人仲良く床に転がる事になる。


 なので、その時は動けなかったと頭の中で言い訳を繰り返す。


「まったく……。咎崎は頭がいいのか悪いのか、たまにわからなくなるよ」


 思い出しながら、やれやれと呆れるように葵は笑う。気付けば薪割りを終えていた葵は切株に腰掛けて右手を見下ろしていた。


 咎崎乃愛は、普通の女の子だった。


 男のような口調、可愛らしい笑顔、整った容姿やそれに似合わぬやや天然気味なのに落ち着いた性格。そういうものが普通という訳ではない。寧ろ特徴という特徴はあり過ぎて並な部分を探す方が難しい。


「……柔らかかったな」


 だが、それでも葵はそう思えた。あの時、乃愛自ら胸に押し当てていた葵の手を引き剥がしたクーラは、まるで姉が妹を叱りつけるように乃愛に怒っていた。その二人の微笑ましい姿が、今も葵の脳裏に焼き付いている。


 その光景は暖かいものだった。


 乃愛の柔肌に触れ、葵は彼女が魔族であるという実感を得るどころか、自分と同じ人間の女の子であるとさえ感じた。実際は魔族である事は言うまでもないのだが。


 魔族と人間の違い。


 魔法が魔石を用いずに使える事、異形な事。思い浮かぶその二つに大きな差はあるだろうか。

 葵は他人より優れた身体能力がある。その辺の不良がバットを振り回していたとしても、葵は負傷はしても負けはしないだろう。


 バットと魔石を置き換え葵を魔族に置き換え、そして不良を冒険者に置き換えれば同じ結果になる。

 葵も魔族も強者であるが故、不良や冒険者を返り討ちに出来る。姿形とて、元いた世界でも白人、黒人、黄色人種の人間がいる。


 それ等に違いはあるか?


 身体能力と見た目の違いだけで、相手を人間じゃないと言う事が果たして出来るだろうか。


 答えは否。


 外国人、生まれの違い。ただそれだけだ。ならば魔族は国が隔たれているだけで、元いた世界で言う外国人という分け方でいいのではないか。そういう考えに行きついて、葵の脳裏に浮かぶのはキングゴブリンの存在だった。


 同じでは……ない。


 けれど、もし理解し合う事が出来る魔族なら人間として接するべきではないだろうか。だからこそリーベとシルトの墓の前で立てた誓いを撤回したのだから、乃愛が魔族だろうと人間であろうと些細な事だ。


──僕は、人間だから咎崎と一緒にいるんじゃない。


 右手を握り締める。この世界に来る前に、乃愛に頬を叩かれたあの一瞬を思い出す。もう二度と、泣かせたくはないから。だから葵は右手を強く、強く握り締めた。リーベとシルトを失った時のように、奪われない為に強くなると心に決めて。


挿絵(By みてみん)


「何が柔らかかったって?」


 とその時、背後から聞こえる声に葵は心臓を跳ね上がらせた。


「……ッ、驚き過ぎだ」


 葵の後ろで乃愛は胸に手を当てる。その表情は苦しみに耐えるように、そして驚いた後のように肩を上下させていた。


 心臓の同化。


 クーラの説教後に二人で話して、葵の感じていた事は信憑性が増した。それは“同化している心臓の鼓動によって互いの気持ちが何となく理解出来る”というものだ。

 葵が興奮すれば乃愛の鼓動も早くなり、乃愛が悲しめば葵も胸が苦しくなる。相手の気持ちを完全に把握出来る訳ではなかったが、確かな契約の繋がりをお互いが感じた。


 つまり今のは後ろから声を掛けられて驚いた葵の心臓が跳ね上がり、その跳ね上がった心臓の高鳴りで乃愛は苦しんだという事だ。


「い、いやボーっとしてて」


「ボケっとしながら薪割りなんて危ないだろう。薪より人間の手足の方が柔らかいんだからな」


 どうやら乃愛は葵の呟いた“柔らかかった”という言葉の意味を誤解したようだったが、葵はこれ幸いと笑みを浮かべて頷いた。

 そんな葵の様子がおかしいと感じたのか、僅かに首を傾げた乃愛は「おかしな奴だな」と僅かに笑いながら呟くと、葵の隣に並んで手を差し伸べる。


「さ、そろそろ行くぞ。私達は貧乏なんだから」


 その手を掴み、葵は立ち上がって頷く。朝の薪割りを終えて葵が乃愛と共に向かうのは、この村──カナンガの村長の家だった。

 この村はヴィーグリーズル王国の北にある街──トゥーレの更に北外れにある村で、スライムの加護が無に等しい。元々はスライムがいたそうだがある時期を境にその加護は失われ、代わりに何人かの冒険者が居座るようになっている。今、葵や乃愛もその冒険者だ。


 クーラがここに居を構えた理由は二つ。まず乃愛の身の安全だった。スライムの脅威は魔王であっても例外ではないからだ。

 そしてもう一つがこの村が冒険者を必要としている村であるから。この村の存続に関わる問題の為、ここに居を構えて護る冒険者だけは例外的に月毎の固定報酬が支払われる仕組みになっている。


 とはいえ安月給であるから定期的に依頼を受けに行かなくてはならないが、村の冒険者全員が同時に出払っては元も子もないので、依頼に出るには村長の許可がいる、という仕組みだ。

 仕事に出るのに許可がいる。そう聞いただけなら現代世界の労働者の多くが羨みそうな村だが、しかし現実はそう甘くはない。


「昨日に続き今日もかい? 働き者なのはいいんじゃがなぁ」


 村長としては一人でも多くの冒険者を村に留めていたいのは言うまでもない。その方が村が安全であるのは明白だ。が、冒険者からしてみればいくら固定給が支払われるとはいえ自由に外に出られず、尚且つ冒険に出る際にいい顔されないのは鬱陶しい。

 故に、今このカナンガにいる冒険者は葵と乃愛を入れても十に満たない数しか住んでいない。それも奴隷級の馬小屋暮らしの冒険者ばかり。


 数が少ない上に成り立ての冒険者ばかりで、成り立ての冒険者に街外れの村とはいえ家を買う金はない。葵と乃愛のように、村一番の屋敷に住んでいる冒険者など珍しいのだ。そんな金がある=凄腕そうな冒険者──実際は同じ奴隷級なのだが──を快く外に出す村長はいないだろう。それも連日とくれば余計に。


「ぬし等金はあるんじゃろ? ならもう少しのんびりしておればよいではないか」


 と、つまりこうなる。しかし、二人にも退けない理由があった。


「どうしても……とは言いませんが、出来れば御願いしたいのですけど」


 困り果てた笑顔を浮かべて食い下がる乃愛に村長も頭を悩まされる。

 葵と乃愛が金に困っている理由は言うまでもない。そもそもこの世界の金を持っていない事だ。

 元いた世界の方ではお互い両親の遺産を相続している事から、贅沢をしなければ働かずに一生を終える貯金はあった。が、当然この異世界で日本円が使える訳もなく、財布に入っている金銭及びカード類は総てゴミ。

 ならどうして屋敷を買えたのか。それはこの世界での協力者のおかげだったのだが、この協力者が何とも有能な馬鹿だった。


 クーラ・メディクス。


 かつて魔族領域の大半を占めていた大国──ニブルヘイムを治めたニーベルング家に仕えたメイド。その中で最も乃愛と近しい存在であった彼女だが、葵はクーラに頭を悩まされていた。

 やる事なす事高水準であり、葵に何やら言いようのない殺気を送る事はあるがそれだけなら別によかった。


 問題は、乃愛に関係する事になると頭が悪くなる事だ。


 この村の屋敷はクーラが手配した。素早く住居を確保し、更に乃愛がスライムに襲われる恐れを排除した徹底ぶり。七年間人間の国に潜伏していた忍耐や、その間に得た知識によって医者をやっていた事も、クーラが優れた人材である証拠だろう。


 しかし、だ。その七年間で稼いだ金や、ニブルヘイムから持ち出した品々を売り払った事で貯蓄していた金はもう底を尽きかけていた。


 というのも、乃愛が住むに値する立派な家というのがクーラの中では見つからず、この村で最も高く立派な屋敷が丁度空き家になっていた事を知り即座に購入。その金額は一千万ジェリー程である。

 これは屋敷や庭の広さを考えれば高くはなかった。所々脆かったりしていた所はクーラの神業によって僅か一日で立派な屋敷となったものだった。

 が、乃愛が今着ているウエディングドレスと司祭の服を合わせたような神官服と太陽のような杖が屋敷より圧倒的に高額だった。


 その金額、一億二千万ジェリー。


 希少な魔石を溶かし込んだその装備は魔力の伝達をよくしながらも、外部からの魔力や打撃に強い抵抗力があるとか。相当な手練れの特注品をほぼ原価で譲り受けたと葵は聞いたが、それにしたって額が大き過ぎるだろと頭を抱えそうになっていた。


 いくら大事な人の身に着ける物だとしても普通は買わない金額だ。普段冷静なクーラも乃愛の事に関しては暴走するから用心しようと心に刻んだ葵だったが、幸か不幸か乃愛の感覚は葵に近いものだった。勝手に使ったとはいえそんな大金を貰う訳にはいかないと、乃愛は金を返す考えを葵に打ち明けた。


 故に、稼がねばならない。


「ねえ、提案があるんだけど」


 食い下がっている乃愛と断固譲らぬ村長のやりとりに、見かねた葵が口を開いた。

 乃愛と葵としてはとりあえず金を稼がなくてはならない。返金は置いといたとして、飲み食いするにも金がいるからだ。

 村長としては村の護りを固めたい。当然だが長として村を護らなければならないからだ。

 行きたい行かせたくない。双方言い合ってばかりでは何にもならないのは明白だからと、葵は僅かな溜息の後に口を開く。


「村長は村を護る必要があって、それは重要です。僕等もその為にここにいるし、それによる報酬も受け取るつもりがある。だけど、僕等も僕等で稼がないといけない理由があるんです。稼げずに倒れたりしたらそれこそこの村を護れなくなりますよ」


「いやいや、金あるんじゃろ? あの屋敷もそうじゃが二人共立派な装備じゃないか」


「いや、逆ですね。実は借金したんですよ。それを返せないとなるとこの村に面倒をかけるかもしれません」


 葵の言葉に村長は顎を撫でながら唸るように頷く。まさか金を借りてる相手が屋敷のメイドだとは思うまいと高を括った葵の深刻そうな演技が効いているようだ。

 乃愛も葵も出来るなら借金の事はあまり知られたくない事ではあったのだが、隠していて金持ち冒険者と勘違いされて動けないのでは意味がない。


「で、ぬしの提案とは?」


 村長の問いかけにニヤリとまるで胡散臭い商人のように爽やかな笑みを浮かべ、人差し指を立てて口を開く。


「という事で僕一人の外出許可を出す、というのはどうですか?」


「ってちょっと待て葵ッ。一人は危険──」


 乃愛の言葉に一瞥する葵は笑みを浮かべているものの、その視線で乃愛を黙らせる。いったい誰の服の代金を支払う為に働かなきゃならんのだ、と。額に浮かぶ青筋は言うまでもなく怒っている証拠だ。


「ふむ、まあそれならよいが。しかし一人で大丈夫なのか?」


「その点を考慮して頂けるのでしたら是非とも二人で、と言いたい所ですがそれは追々……。それとも村に残る咎崎の事でしょうか? でしたら大丈夫です。咎崎は僕より強いですから」


 何せ魔王ですから、とは言わない。


「……身なりが裕福じゃったからつい当てにしておった。そこまで言うならどちらか片方残る事を条件に毎日の外出を許可しよう。二人で外出はしばらく待ってもらうが、それで構わんか?」


 しばらく黙っていた村長だったが、頭を下げつつ承諾する。その言葉に葵は満足したように笑い、乃愛と視線を合わせる。が、乃愛は葵と違って少し納得していないようだった。


「ありがとうございます村長。それじゃ早速トゥーレのギルドに向かうので、これで失礼します」


 言いつつ葵は背中を向け、村長の家を出ようと扉を開ける。


「じゃが、ここに住んでいる限りぬしも村の一員じゃ。おいそれと死ぬ事は許さんぞ若いの」


 その言葉に僅かに振り返って軽く頭を下げ葵はもう一度、しかし今度は含みのある笑みを浮かべていた。


「もちろん。僕は死にませんから」

皆様御久し振りです。御待たせして申し訳ありません。

ここからが本番と言える葵と乃愛の異世界生活。キングゴブリン以上の強敵を前に葵がどう切り抜けるのか、乃愛に隠された秘密や葵の過去、是非見届けて頂ければと思います。

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