アロンダイトの呪い
森の中、パーシヴァルの捜索範囲で最後の標的、パーシヴァルを見つけた。
・・・・・どう殺すか。前の二人のように上手くいくとは思えない。かと言って、正面から戦って勝てるとは思わない。なら、次の機会を待つか?いや、俺は既に二人殺している。ここで殺すのをやめる訳にはいかない。どうする・・・・・
「ん?ランスロットではないか。どうした?そんな所で」
パーシヴァルがランスロットに気づいた。
・・・・・まずいな。パーシヴァルがこちらに気づいた。これではルーカンのようにはいかない。どうする・・・・・
・・・・・こうなったら・・・・・
「いえ。一つ妙な事がありまして」
「妙な事とは?」
パーシヴァルはランスロットにそう聞いた。
「私が調べた区域には何もありませんでした。なのでほかの騎士に聞こうと思いまして、エレック卿の所に行ったのですが・・・・・」
「ですが?」
「・・・・・エレック卿の姿はありませんでした」
「何!?」
パーシヴァルは両目を開いた。
ランスロットは話を続ける。
「エレック卿の区域も調べたのですが、何もありませんでした。エレック卿は殺された。そう思い、次にルーカン卿の所に行ったのですが・・・・・」
「・・・・・ルーカンもいなかったのだな」
「・・・・・はい」
「おそらく、今探している『何か』の仕業だ・・・・・行くぞ、ランスロット」
パーシヴァルは森の奥の方へ歩いていく。ランスロットはその後について行く。
「・・・・・騎士を五人も殺した『何か』・・・・・俺がこの手で殺してやる」
・・・・・今しかない。今、この瞬間が、パーシヴァルを殺すチャンスだ。
ランスロットは剣を構え、パーシヴァルを斬った。
・・・・・しかし
パーシヴァルは右側に避けていた。パーシヴァルは気づいていたのだ。ランスロットの殺意に。
ランスロットの剣は急所に当たらず、パーシヴァルの左腕を付け根から斬り飛ばした。
「・・・・・何故だ・・・・・ランスロット・・・・・」
左腕を失ったにも関わらず、右手で剣を構え、ランスロットに問いかける。
「何故俺を斬る!!俺はお前の敵ではないぞ!!」
「敵ですよ」
「・・・・・何?」
「あなたも、ルーカンも、エレックも、ほかの円卓の騎士も、そして騎士王アーサーも、全員私の・・・・・いや、俺の敵だ」
「・・・・・俺・・・・・」
ランスロットは基本一人称は「私」だ。だが今は「俺」になっている。パーシヴァルは、ランスロットの言葉が、ランスロットの本心から言っているということを理解した。
「・・・・・湖の『何か』はお前だったのか」
「ええ。ただ、俺ではなく、俺とこの剣ですが」
「剣?」
パーシヴァルはランスロットの剣を見た。いつも使っている制式剣出ないことに気づく。
「・・・・・何だ・・・・・その剣・・・・・」
「この剣は魔剣アロンダイト。最初の騎士三人は、この剣を持った瞬間、呪い殺されたそうです。ルーカンとエレックはこの剣で斬り殺しました」
「・・・・・俺も殺すのか・・・・・」
「もちろん」
パーシヴァルの問いにランスロットは答える。
「・・・・・本当に俺を殺せると思っているのか…」
「・・・・・」
パーシヴァルのその問いに直ぐに答えることは出来なかった。
・・・・・殺せるかどうかじゃない。殺すんだ。俺の家族を殺した円卓の騎士達を、アーサーを・・・・・しかし、どうしたら殺せるか・・・・・
ランスロットは、アロンダイトを見る。
・・・・・触れたら呪い殺される・・・・・呪い・・・・・
・・・・・そうか・・・・・
「・・・・・殺せると思ってます」
「何?」
パーシヴァルの問いにランスロットは答える。
「・・・・・先程言った通り、俺より先に調査に行った騎士三人は、アロンダイトによって呪い殺されています。そして、死体が無くなってしまう。アロンダイトは、人の憎しみ、苦しみの結晶といえるものです。アロンダイトに触れた者、斬られた者はその憎しみや苦しみに呪い殺される」
そう言った時、パーシヴァルの斬られた部分から黒い霧のようなものが出てきた。霧は切り口からどんどんパーシヴァルの身体を蝕んでいく。
「何だ!?」
パーシヴァルは恐怖が混じった声で叫んだ。
「それが憎しみ、苦しみです。あなたは、アロンダイトで斬られた。その霧は、あなたを呪い殺す」
霧は、パーシヴァルの身体を蝕んでいく。パーシヴァルの身体がなくなっていく。
「・・・・・た・・・・・たすけ・・・・・て・・・・・」
パーシヴァルはランスロットにそう言うが、
「無理ですよ。もともと俺は、あなたを殺すために、こうしているんですよ。助けるわけないじゃないですか」
ランスロットは冷静にそう答えた。
「くっそぉ・・・・・こんな・・・・・こと・・・・・が・・・・・」
パーシヴァルの身体はなくなっていき、
「ち・・・・・くしょ・・・・・」
黒い霧は、パーシヴァルを喰らい尽くした。ランスロットは喰らい尽くされた場を見たあと、右手にあるアロンダイトを見た。
・・・・・これがアロンダイトの力か・・・・・恐ろしい力だ。
ランスロットはパーシヴァルの最期を見て、そう思った。