復讐
宮殿に戻ると、そこにはアーサーがいた。
「帰ってきたか。それで湖の件はどうだった?」
「・・・・・」
―アーサー。騎士王アーサーがあなたの家族を殺した真犯人よ。
・・・・・今すぐにでも殺してやりたい。今、目の前にいるこいつを無惨に殺してやりたい。
「・・・いえ、何もありませんでした。調査報告書は明日の朝、提出します」
「そうか。ご苦労だったな」
ランスロットは宮殿の中に入り、自分の部屋に戻った。
ランスロットは部屋の中で考える。
・・・・・さて、どうしようか。ただ殺すだけじゃ駄目だ。あいつを精神的にも地獄にたたき落とす。そのためには、何をするべきか。そしてアーサーだけじゃない。ガヴェイン達12人の騎士達をどう殺すか・・・・・。
・・・・・ガヴェイン達はアーサーの手下だ。俺がアーサーを殺そうとしたらガヴェイン達は俺を殺しにくるだろう。円卓の騎士12人を一気に相手して勝つのは不可能だ。そうなるとアーサーを殺す前に、ガヴェイン達を殺す必要がある。それも1人ずつ、確実に。そうするためには・・・・・
「・・・・・暗殺か」
暗殺しかない。しかし、ガヴェインとパーシブァルを暗殺するのは無理だろう。その2人とは正面から戦うしかない。
「・・・・・やるしかないな」
円卓の騎士達はそうするとして、アーサーはどうしよう。アーサーを地獄にたたき落とすにはどうするか。あいつから何か奪えば良いのか。しかし、アーサーから奪えるものってあるのか。アーサーにそもそも大切なものはあるのだろうか。・・・・・大切な・・・・・
「・・・・・グィネヴィア」
グィネヴィア。アーサーの妻。
・・・・・そうだ。アーサーからグィネヴィアを奪えば良いのか。大切なグィネヴィアを。 ならまずは、円卓の騎士を殺す。
「・・・・・よし」
次の日の朝、会議にて、
「騎士王閣下。少しよろしいでしょうか」
ランスロットは手を挙げ、そう言った。
「ランスロット。何だ?」
「この前の湖の件なのですが、昨日私が調査したのですが、何もありませんでした。しかし先日調査しに行っていた騎士3人の行方が分からないのです。あの湖には何かがあると私は思っています。ですので、今日の夜、また調査に行きたいのですが」
ランスロットの提案にアーサーは、
「分かった。調査に行くことを許可する」
・・・・・よし、そしたら・・・・・
「ありがとうございます。それで騎士王閣下。一つお願いがあるのですが」
「お願い?何だ?」
「私の前に湖に調査しに行っていた騎士3人は、未だに帰ってきていません。私が調査した時には、何もありませんでした。騎士3人の姿もです。恐らく殺されいます。私が思うに、湖には何かがいると思うのです」
「ほう、それで」
「今回の調査ではその何かを探し、始末しようと考えています。しかし、私はまだ円卓の騎士になったばかりの未熟者です。騎士3人を殺した相手を倒すのは難しいです。ですから、他の円卓の騎士の力をお借りしたいのです」
「なるほどな・・・・・。分かった。いいだろう」
「ありがとうございます」
・・・・・これで今夜、少なくとも1人は殺せる。
「そしたら・・・・・ルーカン、エレック。今夜、ランスロットと湖に行ってくれ」
ルーカンとエレックか・・・・・この2人なら簡単に殺せる。
「騎士王閣下。私も行きたいのですが、よろしいでしょうか」
そう言い出したのは、古参の騎士パーシブァルだった。
「パーシブァル・・・・・どうしてだ?」
アーサーはパーシブァルにそう聞いた。
そうだ。俺も知りたい。なぜこの人は・・・・・
「・・・・・戦ってみたいのです」
・・・・・え?
「戦ってみたいのです。その何かと。ここ最近、強者と戦えていませんでした。その湖の何かは、騎士3人を殺している。湖に何も無かったということは、死体は無かったのだろう?ランスロット卿」
「え?・・・・・はい」
「なら、湖のそれはなかなかの強者でしょう。私は強い悪と戦うため、騎士を目指した身です。ですので騎士王閣下。私も調査に同行してもよろしいでしょうか」
「・・・・・」
・・・・・この人、戦闘狂だったのか・・・・・
パーシブァルの熱弁?を聞いたアーサーはこう言った
「・・・・・いいだろう。ランスロット、パーシブァル、ルーカン、エレック。今夜、調査に行ってくれ」
「分かりました」
パーシブァルは、そう答えた。
・・・・・パーシブァルの参加・・・・・今夜、ルーカンとエレックを殺すとなると、パーシブァルも殺さないといけなくなる。パーシブァルを殺すことは出来るのか・・・・・俺に・・・・・
朝の会議が終わり、夜になる。
ランスロット達は湖に向かっていた。
「今回はよろしく頼むぞ、ランスロット」
パーシブァルはランスロットにそう言った。
「・・・・・はい」
ランスロットはパーシブァルにそう答え、考える。
・・・・・どうやって殺すか。とりあえず、場所を四つに分け、一つの場所につき一人調査するようにしよう。湖の何かと出会ったらそこでは戦わず、指定した場所におびき寄せて全員で戦う、ということにしようか。配置は、上から見て四等分し、左上にパーシブァル、右上にルーカン、右下にエレック、そして左下に俺という感じにし、エレック、ルーカン、パーシブァルの順で殺していこう。
そう考えている間に、目的地に着いた。
「それでは皆さん、聞いてください」
ランスロットはさっき考えていた配置などを説明し、
「それでは、行きましょう」
そう言って、3人は指定した場所へ向かっていった。
しばらく時間がたち、
「・・・・・そろそろ行くか」
ランスロットはそう呟き、腰に装備されてある剣、アロンダイトを抜いた。青と黒の装飾の剣をしばらく眺めてから、
騎士達を殺すために、歩き始めた。
最初の標的、エレックの所に着いた。エレックはランスロットの存在に気づき、
「ランスロットか・・・・・どうした?」
「私が調べた場所には何もありませんでした。なので、他の騎士はどうかと思いまして」
「なるほどな。俺も今のところ何も見つかっていない」
「そうですか。でもそこに何かありませんか?」
ランスロットは、エレックの後ろを指し、そう言った。
「何か?」
エレックはそう言って、後ろを向いた。
「・・・・・何も無いぞ・・・・・」
エレックがそう言い、ランスロットの方へ向こうとした。その瞬間、
「・・・・・そうですか」
ランスロットはそう言いながら、アロンダイトでエレックの心臓を突き刺した。
「がっ!!」
エレックは血を吐き、顔だけランスロットの方へ向けた。
「な・・・・・ぜ・・・・・」
エレックの問いにランスロットは、
「何故?それはあなたが、あなた達円卓の騎士が、そして騎士王アーサーが、全員俺の敵だからですよ。・・・・・さようなら、エレック卿」
そう言って、ランスロットは剣を抜いた。
エレックの体から大量の血が溢れ出てくる。血を流しながらエレックは倒れ、
「・・・・・死んだか・・・・・」
エレックの体は動かなかった。
「・・・・・一応首を切っておくか」
ランスロットは、剣をエレックの首に近づけ、切り落とした。
・・・・・さて次は・・・・・
ランスロットは、エレックの死体をそのままにし、次の標的の所へ向かった。
次の標的、ルーカンを見つけた。
「・・・・・」
ルーカンはまだ調べている途中だった。
・・・・・首を切って、一瞬で終わらせるか。
そう思い、ルーカンに近づき、
「・・・・・ルーカン卿」
剣を構え、そう話しかける。
「ん?どうした?」
ルーカンがそう言って、振り向いた瞬間、
「さようなら」
そう言って、ルーカンの首を刎ねた。
・・・・・これで二人。後はパーシブァルのみ。
ランスロットは最後の標的、パーシブァルのところへ向かう。