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湖、そして真実


「・・・可哀想な子」


夜、暗闇の中。森の中にある湖で女性はそう言った。


「・・・父親も兄弟も殺されて、唯一生き残っていた母親もあなたを連れてここまで来るので力を使い果たし、死んだ。あなたは赤子なのにもう一人ぼっちになってしまった」


女性は赤子を抱き、涙を流していた。


「・・・あなたは私が育てる。1人にはさせない。もし立派に育ったら、騎士になって欲しい。騎士になり、力をつけ、世界を・・・」













目の前にあるのは、見慣れた天井。


「・・・・・夢か・・・・・」


ランスロットは、起きたあとそう言った。



・・・・・また同じ夢だ・・・・・



ここ最近同じ夢ばかり見ている。湖で謎の女性に抱かれ、あの言葉を聞く。そんな夢をずっと見ている。あれはいったい・・・



「・・・・・行くか」



そう言ってランスロットは、騎士服に着替え、部屋を出た。



会議室。そこに行くと、彼がいた。



「おはようございます。騎士王閣下」


「うん、おはよう」


騎士王アーサー。円卓の騎士の王。俺は彼に仕えている。そして先日、俺は彼のお陰で円卓の騎士に任命された。


「とりあえず席に着いてくれ。全員揃い次第会議を始めるから」


「分かりました」


俺は指定された席に座る。隣には同じ円卓の騎士、カブェインが座っていた。


「・・・俺ほどじゃないがお前も早いな、ランスロット」


「いいえ。これが普通ですので、ガブェイン卿」


そんな会話をしているうちに、他の円卓の騎士も揃った。


騎士全員が座ったのを見て、騎士王が口を開いた。


「全員揃ったな。始めるぞ」


そして、いつもの会議が始まる。

会議では、近隣国で何が起きているかの報告や、問題が起きている場合、誰がどう対処するかなどを話し合っている。


「まず一つ。おかしな事が起きた」


騎士王は全員にそう言った。


「おかしな事とは?」


そう聞いたのは、白髪で同じ円卓の騎士であるパーシブァルだった。パーシブァルは古参の騎士で剣の腕も相当のものだと聞いている。


「この宮殿の近くにある森の湖にこの世のものとは思えない何かがいるという報告を受けた。その報告を受け、昨日騎士3人が調査に行ったのだが、帰ってきていない」


「!?」


会議室にいる全員が驚愕した。


帰ってきていない・・・・・恐らく殺されている。


「そこで、ここにいるものの中で1人、調査に行ってほしいのだが、行ってくれるやつはいるか」


「・・・・・」


静か・・・誰も発言しない。

そりゃそうだ。訳の分からないものが相手だとどうなるか分からないからな。

正直俺も行きたくないのだが、森の中の湖か・・・


ランスロットは、最近よく見る夢のことを思い出した。


・・・・・調べて見るか。



ランスロットは手を挙げ、


「私が行きます」


「ランスロット。お前なら安心出来るな。頼んだぞ」


ランスロットの発言に騎士王はそう言った。


「はい、騎士王閣下」


そして時間が経ち、会議が終わる。


湖に行くのは夜。俺1人で充分だろう。


そして夜、ランスロットは1人で湖に向かった。

ランスロットは、湖で育った。母親と2人で過ごしていたのだが、ある日、母親が突然いなくなった。理由は分からない。だがランスロットは、これは運命だと思い、1人で生きていき、騎士になった。調査で行く湖は、自分が過ごしていた場所だ。湖に行くのは約10年ぶり。騎士になってからずっと行っていなかった。果たして湖に何がいるのか。


・・・もし敵だったら、斬って騎士王閣下に報告しよう。湖の問題は解決しました、と。


そう考えている間に、目的の湖に着いた。


・・・さて、調べるか。


いろんな所を調べ尽くした。そして結果は・・・


「・・・何も無いな」


怪しいものはどこにも無かった。それじゃあ調査にいった騎士達はいったいどこへ・・・


「ランスロット・・・・・帰ってきたのね」


後ろからそう聞こえた。


誰だ?と思った。だが何故か懐かしさを感じた。俺はこの声を聞いたことがある。


恐る恐る後ろを見た。

そこに居たのは1人の女性だった。


整った顔、青い瞳、そしてランスロットと同じ青色の髪。小さい頃、ずっと近くにいた。その女性は間違いなく・・・


「・・・母さん」


昔、ランスロットの前からいなくなった母親だった。


「・・・母さん・・・今までどこに・・・」


「・・・ランスロット。あなたに言わなきゃいけない事があるの」


その女性はそう言ってランスロットに近づいた。


「・・・言わなきゃいけない事?」


言わなきゃいけない事とはいったい・・・


「・・・・・まず私は、あなたの母親じゃないの。私はニミュエ。この湖の精霊です」


「・・・え?」


母親じゃ・・・ない・・・だと・・・


「あなたは元々王子だったの。あなたの父、バンは元々フランスの地方国家ベンウィックの国王で、アーサーの強力な後ろ盾だった。ベンウィックに城を建てていて、国民にも慕われていた。でも、あなたがまだ産まれたばかりの頃、あなたの家は襲われたの。その時にあなたの兄弟とあなたの父、バンは死んだ。唯一、逃れることが出来たのは、あなたの母親、エレインとエレインが抱いていたあなただった。エレインはあなたを抱いてこの湖に来た。その時点でエレインは、もう死にかけてた。私は元々この湖に住んでいたからエレインが来た時、そこに駆け寄ったの。私に気づいたエレインは、この子をお願い、と言ってあなたを託されたのよ」


「・・・・・」


・・・・・俺の家が襲われた。その時に家族が全員死んだのか。それでこの人が俺を育ててたのか。



「・・・・・俺の家を襲ったのは、誰なんだ」


俺の家族を殺したのは誰なんだ・・・


「・・・クラウダスという騎士。でもその男は、口封じで殺されている」


「口封じだと!!誰に?」


口封じで殺されているということはつまり、別の誰かがクラウダスに命令し、家族を殺したということ。


「アーサー」


「・・・は?」


今、とんでもない答えを聞いた。


「今・・・何て・・・」


「アーサー。円卓の騎士の騎士王アーサーがあなたの家族を殺した真犯人よ」


「そ・・・そんな・・・」


騎士王閣下が俺の家族を殺した。そんな・・・


「アーサーの目的は聖杯という神器を手に入れ、神の力を手にすること。しかし神の力なんて普通簡単に扱えるものじゃない。バンはアーサーに反対していたの。自分の意見に反対したことに苛立ったアーサーは、クラウダスに命令し、バンを含む家族全員を殺しに行った。そしてあなた以外全員死んだ。今でもアーサーは聖杯を求め、探している」


「・・・・・」


・・・・・夢で言っていた世界をとはこういう事だったのか。

騎士王閣下が、俺の家族を殺した。俺の敵は騎士王閣下アーサー。


「アーサーだけじゃない。今の円卓の騎士のガヴェイン達12人が敵」


「・・・何」


俺の周り全員敵。

・・・・・俺の家族を・・・・・


「・・・・・殺してやる」


殺してやる。騎士王閣下、いやアーサーをガヴェイン達12人の騎士達を、全員殺してやる。


「・・・・・今すぐじゃ無理。年密に計画を建てて行かないといけない」


「ああ・・・分かってる」


「とりあえずこれを」


ニミュエは、蒼と黒の長剣を出してきた。


「これは?」


「これは魔剣アロンダイト。最初に来た騎士3人は、これを持った瞬間呪い殺された」


「!?」


持った瞬間、呪い殺されただと!?それじゃ俺もこれ持った瞬間殺されるんじゃ・・・


「あなたなら大丈夫。憎しみで満ち溢れているから」


「・・・・・」



とりあえず持つ。

持っても何も起こらなかった。


「大丈夫だね。これでその剣はあなたのものです」


「・・・・・」


魔剣アロンダイト・・・この剣を使って俺は、アーサーを・・・・・






殺す。



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