Side エリージャ
「…っと!」
安心したのか、腕の中に倒れるようにして眠りについた目の前の女の子。
流れるような黒髪のミディアムヘアに雪のように白い肌。
10人に問えば10人が美少女だと答えるであろうその容姿。
何の道具も持ってきていないところも見ると、狩りに来たわけでも採集にきたわけでもなさそうだ。
それに、さっきの熊男達に何の抵抗もできずに襲われていたところを見ると同業者ってわけでもなさそうだし…
「なーんでこんな森の奥にいるんだか…」
俺はその子をそのまま放っておくわけにもいかず、ある人に連絡を入れる。
「…あ、ブラムさん?お久しぶりです。エリージャです。ちょっと近くまで来てるんで、伺わせてもらってもいいですかね?…それと、ちょっと面倒見てほしい子がいるんです。詳しい事は直接……はい、ありがとうございます。ではまた。」
無事に了承を得ると、腕の中でスヤスヤと眠る女の子を抱きかかえる。
さーて。早く仕事終わらせないとレガちゃんに怒られそうだし急ぎますか。
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森から出てしばらく進むと、小さな村に辿り着く。
ルークスの村。周りを緑で囲まれ暖かい光が降り注ぐこの村は村人達が協力しながら自給自足の生活を営んでいる。
俺は少女を抱えたまま、村の中央へと進んでいく。
この村の村長であり、かつての俺の師でもあったブラム・アビエルの住む家へと。
コンコンと扉を2回ノックすれば、中から1人の女性が出てきた。
イライザ・アビエル。ブラムさんの妻であり、非常に朗らかなご婦人だ。
「あらあらあら。エリージャ、久しぶりねぇ!
こんなに大きくなっちゃって!」
「お久しぶりです、イライザさん。あなたも変わらずお綺麗だ」
そう言うと彼女はフフフと手を口に当てて笑う。
「相変わらず軽い口ねぇ。もう60のお婆ちゃんよ?でもその言葉はありがたく受け取っておくわ
ブラムさんから聞いてるわ、面倒を見てほしいというのはその子ね?怪我は…ないみたいだけど、疲れきってるわね…
ベッドで寝かせてあげましょう。さ、中へ入って!」
「軽口だなんて…真実ですよ。お邪魔します」
イライザさんに招き入れてもらい家の中に入ると、既にブラムさんが椅子に腰掛けて待っていた。
「…早くベッドで寝かせてあげなさい。話はそれからだ。」
俺は腕の中の少女をベッドの上に下ろし、ブラムさんの元へ向かう。