最悪の再会
はっと目が覚める。
目覚めればそこは変わらず部屋の中で。
変わったことといえば、外が眠る前よりも暗くなっており、時計の針が2時間ほど進んでいることぐらいだ。
「…夢?」
さっきの白饅頭は私の見た夢なのか。
それにしては嫌に記憶が鮮明すぎる。
あれはたぶん、夢ではない。
「何が起こるっていうのよ」
場合によっては生きるかも死ぬかもしれないと言われてしまえば気が気でない。
白饅頭は、私には力があると言っていたが、こっちの世界にきてからそんな兆しを見たこともない。
私はもう一度ベッドへと倒れこんだ。
時計の針は深夜であることを示しており、順調に寝ていれば私も深い眠りの中にいるはずだった。
が、今は胸がざわつき眠ることができない。
「あの白饅頭…明日寝不足確定じゃない…」
白饅頭への恨みを口にしたその時。
ギシッギシッ
と、廊下から床が軋む音が聞こえた。
足音はコソコソと静かに移動をしながら台所の方へと遠ざかっていく。
イライザさんかブラムさんが起きたのかとも思ったが、違和感を感じる。
「…なんで私の部屋の前を通って台所に?」
この家の間取りは少し特殊で、台所へ行く方法は2通りある。
1つは今みたいに個室の前の廊下を通って行く方法。
こちらから通ると今みたいに床がきしむ上に、イライザさんやブラムさんの部屋からだと少し遠くなる。
もう1つがリビングを通っていく方法。
夜中に通るのならこっちを使う方が静かに移動できるし、イライザさん達の部屋からだと、より短い道のりですむ。
私は寝巻の上にブランケットを羽織り、机にある燭台を持ち、静かに部屋を出た。
廊下を進んで行くと、台所は暗いままであるにも関わらず、ゴソゴソと物音がする。
そっと覗くと私はヒュッと息が詰まった。
確実にイライザさんでもブラムさんでもない人影がある。
イライザさんよりも長身で、ブラムさんよりもごつい。おそらく男の影。
ゴクリ…と唾を飲みこむ音すら相手に聞こえてしまいそうなほど静まり返った空間。背中に冷や汗が流れる。
恐怖に心が支配されそうになるが、万が一そいつが盗人であった場合を考えるとこのままにしておくわけにもいかない。
私は小さく息をつき、勢いよく明かりをつけながら飛び出した。
「…っそこにいるのは誰!?」
いきなり明るくなった視界に、私も男も互いに少し動きを止める。
が、ようやく慣れた視界にうつった人物に私の体が、ここから逃げたいと叫びだした。
「…よぉ、久しぶりだなぁ」
そこにいたのは、私がこちらの世界に来たあの日、
私を襲い、エリージャによって逃げていったあの熊男だった。